ペディグリー。
2003年7月13日昨日の夜、
親子丼を食っていたら昔を思い出した。
昔、オレが勤めていた会社には
“残業食”というものがあった。
その名の通り、
残業をする社員に配給される食事。
作ってくれるのは
会社の施設なんかを管理してくれてるオヤジで、
昔は板前をやっていたそうだが、
残業食を作ってる時以外は、
いつも暇そうに草をむしったり
ペンキを塗ったりしていた。
そんなオヤジの傍にはいつも、
ヤスジロウさんという犬がいた。
ヤスジロウさんは、
いつの間にか会社に住み着いた野良犬で、
泥だらけの小汚い雑種だったが、
人なつっこい為、社員に可愛がられていた。
よく、人の足に乗りかかってきては
腰をペコペコ振っていたので、
オレ達、ハングマンメンバーの間では
“エロジロウさん”と呼ばれたりもしていた。
オヤジが作る残業食は
あまり評判が良くなかった。
まず、メニューが
うどん、カレー、親子丼の三種類しかなかった。
そして、
その料理にはどれも、肉が入っていなかった。
掲示板に、
『今日のメニュー 親子丼』と書いてあっても、
鶏肉はどこにも見当たらず、
目の前にあるのはタマゴばかりの
タマゴ丼であった。
でも、これから夜遅くまで
残業をする社員にとってはアリガタイもので、
オレらは文句を言いながらも
アリガタクいただいていた。
そんなある日、
いつものように残業食を食べに食堂に行くと、
オヤジが作る残業食に異変が起きていた。
目の前にあるカレーに肉が入っていたのだ。
なぜかその日だけは
カレーに肉が入っていたのだ。
「おお!!肉入ってる!!スゲー!!」
ワリと普通の事に驚嘆の声をあげて、
オレ達ハングマンメンバーは
オヤジのカレーをほおばった。
と、突然、
ハングマンメンバーの1人がつぶやいた。
「そういや最近、
エロジロウさん見かけねぇな。」
っっっ!!!
そうだ。
確かにその時期、
会社からヤスジロウさんの姿が消えていたのだ。
オレらハングマンメンバーは
沈痛な面持ちでスプーンを置いた。
そして、その後。
ひょっこりと泥だらけのヤスジロウさんが
会社に帰ってきた。
その泥だらけの、
前にも増して汚くなった
ヤスジロウさんの姿を見た時、
ハングマンメンバーは本気で
涙を流して喜んだ。
「おおおおおおっ!!
オレら、エロジロウさんとこ
食ってなかったよ!!
良かった!!
ホントに良かった!!」
「よぉし!!
ペディグリーチャムだ!!
ペディグリーチャム買ってこい!!」
そして、
ヤスジロウさんには
4個のペディグリーチャムと
1個のカルカンがプレゼントされた。
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