いつもの帰り道の途中で曲がり、
少し遠回りして帰ると、
途中の家に一匹の小汚い犬がいる。
 
 
名前は、藤田。
 
 
藤田というのは、
もちろん、オレが勝手につけた名前。
 
 
頬のたるみ具合が、なんとなく
“はぐれ刑事”藤田まことを連想させたので
勝手に藤田と呼んでいる。
 
 
藤田は、何系の雑種だかわからないが
ホントに小汚い犬で、
ムクムクと全身を包む毛の先には
毛玉がブラ下がり、いっつも泥にまみれていた。
 
 
そしてまた、ホントにバカっぽい犬で、
藤田の前をたまにしか通らないオレにでさえも
首に繋がる鎖をめいっぱいに伸ばして
シッポを振りながら近づこうとする。
 
 
オレは、なんとなく、
飼主が気取った格好をさせてる犬とか
CMに出てくるプルプルしてる犬より
そういった、バカっぽい犬のほうが好きなので
たまにこの道を通っては
藤田の事を見ていたのだが、
オレが近くで見ていても
シッポを振って寄ってくるあたり、 
この藤田、番犬としての才能は
ゼロに近いように思われた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
昨日も、
先日当てた自転車に乗るのが楽しくて
ちょっと遠回りして帰ると、
いつもの場所に藤田はいた。
 
 
藤田は、何を思っているのか
自分のシッポを追いかけて
グルグルグルグル時計回りに回っていた。
 
 
そして、時折止まって、
しばらくボーッとする。
 
 
そしたらまた、
今度は逆回転で
グルグルグルグルとイキオイヨク始める。
 
 
そしてまたボーッとする。
 
 
藤田のグルグルがなんだか面白くて、
それでいて、
決して掴めない夢を追いかけている人みたいに
なんだか悲しく感じられて、
オレは、
 
 
「まわれまわれメリーゴーランド!!
 もう決して止まらないように!!」
 
 
などと、自転車を止めて
久保田チックなエールを
心の中で無責任に送っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
しばらくすると、
藤田の飼主であろう、オバチャンが
家の中から出てきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ジュディ〜、ご飯〜」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジュ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジュディ!?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あんな小汚い犬なのにジュディ!?
 
 
グルグル回ってんのにジュディ!?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
えええええええええっ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジュディじゃないだろー。
 
 
ジュディなんてはいからな名前じゃないだろー。
 
 
どっちか言うとやっぱ藤田だろー。
 
 
藤田のほうがピッタリだろー。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
だいたい、
この犬のどこがジュディなのか。
 
 
この犬のどこをドウとったら
ジュディという名前が出てくるのか。
 
 
そして、何よりも、
オバチャンの口から
ジュディという言葉が出てくる事が、
オレにとっては悪い夢を見ているようであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ちうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
藤田ってメスだったんですか!?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジュディの名前の由来はやっぱ、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『オング』なのだろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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