ホントノ空。
2003年8月29日「検査の結果次第では手術」
そう、
医者に言われた事で焦りを感じていたのか、
検査の数時間前、
どうにもじっとしていられずにオレは、
ただ、車を走らせた。
そして、ただなんとなく辿り着いたのが
『知恵子抄』で有名な
高村光太郎の妻、千恵子の生家であった。
千恵子記念館に入ると
いくつかの千恵子作の絵が展示されており、
光太郎が愛した千恵子と、
その千恵子の才能を知る事が出来た。
記念館の裏手には、
光太郎と千恵子が静かに愛を育んだ鞍石山があり、
そこには、光太郎の詩碑と展望台がある。
オレは、何も考えずに
ただ、その展望台を目指した。
“どうせ、人なんていないだろう”
そう考えていたのだが思いの他人が多い。
精神を病んでしまった千恵子と、
その夫、芸術家、高村光太郎の物語。
こんな時代でも、まだ、
『知恵子抄』に
心を動かされる人がいるのかと思うと、
なんだか嬉しくなった。
展望台から、遠くを眺めてみる。
“千恵子と光太郎が見た景色は
この景色なのだろうか”
そんな事を考えながら眺めていると
知恵子抄に収められた詩が浮かぶ。
あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。
ここはあなたの生まれたふるさと、
あの小さな白壁の
點點があなたのうちの酒庫。
それでは足をのびのびと投げ出して、
このがらんと晴れ渡つた
北国きたぐにの木の香に満ちた空気を吸はう。
あなたそのもののやうな此のひいやりと快い、
すんなりと弾力ある雰囲気に肌を洗はう。
私は又あした遠く去る、
あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ。
ここはあなたの生れたふるさと、
この不思議な別箇の肉身を生んだ天地。
まだ松風が吹いてゐます、
もう一度この冬のはじめの
物寂しいパノラマの地理を教へてください。
あれが阿多多羅山
あの光るのが阿武隈川。
『樹下の二人』
曇ってはいたけど、そこには、
千恵子が愛した“ほんとの空”があった。
福島には何も無い。
これといったテーマパークもないし、
会津に行けばいろいろとあるけど、
そこはオレの行動範囲ではない。
「フルーツ王国」などと言われる事はあっても
実際、桃でも梨でも、
生産量は一位ではなかったりする。
だけど、展望台から空を見上げてオレは思った。
“この空は、世界に誇れる”
白く曇った空の切れ目から
覗いている空の色は
どこまでも突き抜けるように青く、
その“青”こそが、千恵子が愛した、
“ほんとの空”だという事を知った。
老夫婦に話し掛けられる。
「写真お願いできますか?」
関東圏から来たのだろうか、
その品のある老夫婦はきれいな言葉を話していた。
詩碑をバックにして老夫婦を写真に撮る。
しばらくすると、
今度は若いカップルに写真を頼まれたので
また、詩碑をバックに写真を撮ってやる。
少なくとも10人はいたのに、
ナゼか、みんなオレに頼んでくる。
相当、オレが暇に見えたのか。
それとも、そんなにいい人に見えたのか。
そしてまた、しばらくすると
今度は、若い女性三人組に話し掛けられた。
「すみません、
カメラお願いしてもいいですか?」
オレに頼むなっ!!
他にも人いるだろ!!
なんじゃ、ワシャ写真屋さんか!?
修学旅行にくっついてくる写真屋さんか!?
オレに撮ってもらいたかったら
脱げっ!!
しかし、オレも大人なので快く引き受けた。
ほんとは快くないのだが。
「はい、撮りまーす。アレ?」
「あ、フィルム巻いてください。」
フィルム巻いてから渡せやコノ女っ!!
少々腹が立ったので、
2枚撮った中の一枚は、
シャッターを押す時、構図を狂わせてやった。
横に並んでピースする女三人組を
ファインダーの右の方に寄せて、
左側に、無駄なスペースを空けてやった。
へっ。
ザマァゴランクダサイマセ。
そんな悪さをするオレをも
“ほんとの空”は包み込んでくれるようで、
オレは“何があろうと動じない”
そう決めて、病院へ向かった。
智恵子は東京に空がないといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山の山の上に毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
『あどけない話』
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