ペイズリー。
2003年9月15日男は、海岸線に設置された
テトラポットの上に立っていた。
友人と
サッカー日本代表の合宿施設である
『J−ヴィレッジ』を訪れ、
福島県いわき市にある『市場食堂』で
大トロ定食に舌鼓を打ち、
『アクアマリンふくしま』という、
水族館を訪れ、
1日中、あちこちを見て回ったその男は、
1日の終わりに、
いわき市の海岸線に設置された
テトラポットの上に立ち、
充実した今日を回顧しつつ、
遠く見える海岸線を見つめていた。
両腕を広げてバランスをとりながら、
テトラポットの上を歩く男。
下に見える海面は青く、
見ているだけで吸い込まれそうになる。
と、思ったら、
男は本当に吸い込まれた。
ザブン
男は、テトラポットから落ちた。
後ろでは、
「わ、自殺!?」などと友人が騒いでいたが
男は、海面に身を投げたのではなく、
ただ、純粋に落ちただけであった。
降りたのではなく、落ちたのだった。
慌てて、様子を伺いにくる友人。
しかし男はバカ丸出しで
服を着たまま、海で
「見て見て!!バタフライ!!」などと、
友人の心配をヨソに
全然、前に進まないバタフライをしていた。
楽しかった時間にも終わりは来る。
帰途につく際、
男が濡れた服のまま
友人の車に乗り込もうとすると、
友人が言い放った。
「シートが濡れるからダメ。
君はトランクに乗りなさい。」
唖然とする男。
トランクとは、
一体、どういう事なのか?
手荷物か?
手荷物扱いか?
男はなかば強引に、
ワゴン車の後部座席の後ろの
トランクルームへと押し込まれた。
「検問があったら、
絶対に誘拐犯と間違われるぞ!!」
「殺人及び死体遺棄と間違われるぞ!!」
男の懸命の訴えも空しく、
男をトランクに詰めた車は
福島市方面へ走り出した。
トランクルームの中、男は危険を感じていた。
海でバタフライをして、
トランクルームの中、
ズブ濡れになったTシャツと
ジーパンを脱いでパンツいっちょになっていた男。
濡れたパンツが肌に
ピッタリくっついて気持ち悪いのだ。
“イカン!!
このままでは
チンコがカブレてカユカユになる!!”
そう、自分のシャイなアンチクショウに
危険を感じた男は、トランクルームから、
運転している友人に向かって訴えた。
「スミマセン。パンツ買ってきてください。」
近くにあったコンビニに停車し、
友人は「しょうがねぇなぁ」と言った顔で
パンツを買いに中に入る。
しばらくして、友人は戻ってきて
男に、パンツの入った袋を手渡した。
男は、助かったとばかりに
袋を開けて、パンツを取り出す。
そして、そのパンツを見て愕然とする。
ペイズリー!!
友人が買ってきたパンツの柄が
ペイズリー柄なのだ。
沢山の種類のパンツがある中で
友人が買ってきたパンツは、
茶色をベースにしたペイズリー柄の
パンツだったのだ。
もはや、イヤガラセとしか思えなかったのだが、
男は、黙ってペイズリー柄のパンツを履いた。
海に落ちるまでは、
買ったばかりのお気に入りのTシャツに、
4万円した古着のリーバイスを履いていたのに、
今はペイズリーのパンツいっちょ。
男は、自分のあまりの情けなさに
涙を堪えるのに必死だった。
そんな男を見かねてか、
男は友人に、後部座席に座る事を許され、
パンツいっちょで後部座席に座った。
そして、車は一路、福島市へと向かった。
やがて、車は福島市の男の家へと到着。
濡れた服を着るのも気持ち悪いし、
家の入り口まで数歩という事もあり、
男は、友人に別れを告げると足早に、
パンツいっちょで家へと急ぎ、
玄関のドアをあけた。
「あんた、裸で何やってんの?」
玄関のドアを開けたそこには、
男の母親が立っていた。
男が一体誰であるか。
もはや語るまい。
***********************
フォト日記にて
いわき旅行の写真公開。
***********************
コメント