人魚。

2003年10月29日
 
 
オレの目の前には、
オレの部屋がある二階から
一階へと下る階段があった。
 
オレの目的はこの階段を下り、
そして、トイレに駆け込み
このタマリにタマッた
オシッコを解放して小さな幸せを感じる事。
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
 
シビレていたのだ。
 
足が。
 
両足が。
 
階段など、とても下りられぬ程に。
 
そして、38度の熱もあった。 
 
しかも、ケツがカユイ。
 
言わば三重苦。
 
この三重苦の状態で、
目の前の階段を下りる事など
とても不可能に思えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オレは自分を恨んだ。
 
正坐して、
オシッコを我慢しながらTVを見ていた自分を。
 
正坐して、オシッコを我慢しながら
 
 
 
“今日の鴻上尚史の次は誰だろう”
 
 
 
と、明日のテレフォンショッキングの
ゲストを気にしていた自分を。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なんだ、天野(キャイ〜ン)かよっ!!」
 
 
 
急いでトイレへと立ち上がった時、
すでにオレの足は、シビレてジンジンだった。
 
階段の上で立ち尽くすオレ。
 
ほんの十数段の階段も、
その時のオレには、
地獄へと果てしなく続く階段のように映る。
 
シビレている両足はすでに
自分のモノではないような感覚に囚われていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
“イカン。
 このままでは30歳にして小便漏らしだ”
 
 
 
オレは考えた。
 
この階段を下りる方法を。
 
この試練を乗り越える方法を。
 
そして思いつく。
 
 
 
“落ちればイイのだ!!”
 
 
 
我ながらナイスアイデア。
 
冴えまくっていると言っても過言ではなかろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
階段の一番上の段に腰を降ろし、
そこで身体を階段に垂直に伸ばす。
 
階段の上に寝た状態になり、足を揃えて放り出し、
身体を少しだけ反らせて浮かせ、
両腕でちょいとイキオイをつけてやる。
 
 
 
 
  
     ストン
 
 
 
 
  
おおっ、下りれた!!
 
簡単に下りれた!!
 
若干、ケツと背中が痛いが
お漏らしするよりはマシだ!!
 
いや、階段を下りた時の痛みが
カユかったケツに丁度イイ塩梅だ!!
 
 
 
 
 
     ストン
 
     ストン
 
     ストン
 
 
 
 
 
次々に階段を下りていくオレ。
 
階段を下りていく中、オレは思った。
 
 
  
“この、
 揃えて前方に投げ出された両足、
 まるで、
 陸に上がった人魚のようじゃないかっ!!”
 
 
  
そしてオレは、
「両足を揃えて投げ出し、ケツで階段を下りる」
というこの階段の下り方を、
【人魚下り】と名付けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
フハハハハハハハハハハッ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
スムーズッ!!
 
スムーズ、人魚下りっ!!
 
楽ちん〜。
 
楽ちん〜。
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
     ストン
 
     ストン
 
     ストン
  
     ストン
 
 
 
 
 
次々と階段をケツで下り、
オレは無事、最後の段に辿り着く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
と、その時、オレは重大な事実に気付いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
“あ、足がシビレてねぇ・・・”
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そうだ。
 
人魚下りの楽しさに夢中になっている間に、
いつの間にか、足のシビレが消えていたのだ。
 
早く気付いていれば、
途中から、普通に階段を下りる事ができたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんという愚か者なのか、オレ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オレは、普通に立ち上がると、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
普通にトイレに行き、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
タマリにタマッたオシッコを
ズバババババババババババッと便器へと放った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
チョロッ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
うわぁ、ジイさんかよ、オレ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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