シヴィルウォー。

2003年11月20日
 
 
先週から、
ウチの職場にアルバイトの女の子が来ている。
 
アイ。23歳。
 
見た目は今時っぽくて
取っ付きにくい感じなのだが、
話してみると、なかなかイイ子だった。
 
アイは、オレのお手伝いという形で、
オレと一緒に仕事する事が多い。
 
だから、自然とオレと話す機会も増え、
特に深い意味はないが、仲良くもなった。
 
そして、
そんなオレ達を陰から見ているクラキの
羨ましげな視線にオレは気付いていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そんなある日、いつものように
オレとアイが並んで仕事をしていると、
クラキが突然、オレ達のところに来た。
 
どうやら、
オレとアイの会話に参加したいらしい。
 
しかしクラキは、
妙なタイミングで相槌を繰り返すばかりで
自分から会話を投げかける事が出来なかった。
 
 
 
“あ〜、クラキは、
 アイと話したいのに
 なかなか話せないでいるな?”
 
 
 
オレは、そう気付いていたが、
それはソレで面白いので、放っておいた。
 
そして、そんな時間が少し過ぎた時。
 
突然。
 
突然、クラキが口を開いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ゲルタ君、なに勃起してんの?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

っっ!!
  
ぼ、勃起なんかしてねーよっ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんで!?
 
なんで、イキナリそんな事を言う!?
 
見てみろ!!
 
よ〜く見てみろ!!
 
どこが勃起してんだコノヤロウ!!
 
イヤン、そんなに見ないで。
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
隣のアイの方を見ると、
アイは、あきらかに困惑気味だ。
 
オレはその時気づいた。
 
 
 
“あ〜、クラキは、
 オレとアイが仲がイイのが面白くなくて
 オレを貶めようとしているな?”
 
 
 
なんて陰湿なのだろうか。
 
そして、なんてガキなのだろうか。
 
アイと話したいなら話せばイイのに。
 
オレは、
クラキのそんな行為に腹を立て、
そのクラキの行為を宣戦布告と捕らえた。
 
やってやろうじゃないか。
 
売られた喧嘩は高値で買取いたします。
 
そして、
【郵便局内戦
(ポストオフィス・シヴィルウォー)】
が始まったのである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
シヴィルウォーと言っても、
手を出すワケじゃない。
 
口で、相手を中傷するだけ。
 
言わば、情報戦であった。
 
しかし、その情報戦は熾烈を極めていた。
 
 
 
 
 
「や〜、ゲルタ君、
 昨日、ソープランド行ったんだってね〜」
 
 
「いやいや、クラキさん、
 ソープなんか行った事もないよ。
 君こそ、『ビデオ安売り王』に足しげく
 通っているそうじゃないか」
 
 
「いやいや、
 エロビデオなんて、見た事もないよ。
 君が沢山見たエロビデオの中から
 オススメのビデオを教えてくれないかな〜」
 
 
「またまたまたまた!!
 エロビデオを見た事ないだなんて!!
 延滞しちゃってるそうじゃないか」
 
 
 
 

オレとクラキ、
23歳女性のアイがヒきそうな事を次々と並べる。
 
アイに、相手の悪い印象を持たせる。
 
それだけが目的。
 
その為だけに嘘八百を並べろ。
  
しかし、お互いに思いついた嘘を並べてはいたが
この情報戦は、
全てがデマゴーグというワケでもなかった。
 
そして、そんなやりとりがしばらく続くと、
いつの間にか、アイと一番歳が近い、
キツが参戦してきた。
 
そして、シヴィルウォーは
ますます過激になっていく。
 
 
 
 
 
「いや〜、ゲルタ君、
 こないだナンパした女どうした?」
 
 
「あ〜、ゲルさん、どうなったんすか?」
 
 
「ナンパなんかしてねーよ。
 オレは彼女いるっつーの(当時)
 素人童貞は黙ってろ!!
 ってか、クラキさん、
 もうすぐ、出来ちゃった結婚だねー」
 
 
「オレは素人童貞じゃないっすよ!!」
 
 
「出来ちゃった結婚じゃないよ!!
 ってゆーか、結婚なんかしないよ?
 ボケてんじゃない?」
 
 
「うわ、彼女かわいそー。
 ね、アイ、聞いた?
 結婚するのに、結婚しないとか言ってるよ。
 彼女かわいそうだよなー。」
 
 
「ほんと、ヒドイですよ、クラキさん」
 
 
「うるさいよ、素人童貞!!」
 
 
「オレは素人童貞じゃないって!!」
 
 
 
 
 
オレはエロ、
クラキはヒドイヤツ、
キツは素人童貞と、
それぞれ、イメージが固まってくる。
 
そんなやりとりが暫く続いた後、
クラキは営業に、
キツは配達に出て行った。
 
シヴィルウォー、一時休戦。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
休戦中、
オレは、アイがどうして
この職場にアルバイトに来るようになったかを
訊いてみた。
 
 
  
「ウチのお父さんが、
 ○○郵便局(近所の郵便局)の局長なんですよ。
 で、ここ(ウチらの局)が
 人手が足りないって情報が入って、
 私、仕事してなかったからー。」
 
 
 
ああ〜、
そういう事だったのか〜。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ん!?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今、何て言った!?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アイのお父さんが・・・・・・
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「○○局の局長です」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
!!
 
アイ、キミは○○局の局長の娘だったのか!!
 
いや、
ご令嬢であらせられましたか!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
営業と配達、
それぞれから帰ってきたクラキとキツに
「アイは○○局の局長の娘」という情報を流す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ゲルタ君、彼女(当時)と幸せにね!!」
 
 
「いや、クラキさんこそ、
 幸せになってくださいね!!」
 
 
「キツも、
 早く素人童貞じゃなくなるとイイね!!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
男たちは、
己の愚かさを悔やみ分かり合ったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     − シヴィルウォー終結 −
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

だが、1人、もう一度内紛を起こしかねない
火種を抱える男がいた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「オレは素人童貞じゃないって!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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