休みだった昨日、
午後からの雨で、部屋でクサッていると
玄関のチャイムがなった。
 
出てみると、腰の曲がった知らないおばあちゃん。
 
おばあちゃんの隣には
今時、野菜の沢山乗った大きなリヤカーがあった。
 
 
 
 
 
「ウチで作ったヤツなんだけど、
 お兄ちゃん、なんか買ってくんねかい?
 白菜とかあるからー。」
 
正直、いらなかった。
 
ウチは、両親が趣味で野菜を作っていて
今は丁度、白菜が獲れる時期。
 
白菜は、ウチの両親が作るモノで充分。
 
そしてなにより、
オレは野菜が食べられなかった。
  
それでも、おばあちゃんが作ったという野菜を
触ってみたかった。
 
 
 
 

手にとってみると、
同じ白菜なのに
スーパーで見る白菜とは全然違う白菜のよう。
 
ところどころ、まだ土がついていて、
葉も整ってなくてバサバサ。
 
形は悪いけど、
スーパーで売っている白菜よりも、白菜だった。
 
 
 
 
 
7個買う。
 
おばあちゃんは正直、
ウチのチャイムを鳴らしてオレが出てきた時、
ガッカリしたんだと思う。
 
オレが、何も買わないと感じたと思う。
 
それが、白菜ばかり
1000円以上も買った。
 
おばあちゃんはビックリしたと思う。
 
「いっぱい買ってくれたから」と、
白菜をもう1個、オマケにつけてくれた。
 
 
 
 
 
オレはこの時ただ、
情に流されたんだと思う。
 
腰の曲がったおばあちゃんが雨の中、
大きなリヤカーを引いて行商している。
 
その姿を見て、情に流されたんだと思う。
 
帰宅した母親に、
「バカな買い物だ」と散々言われたけど、
それでも、オレは間違ってはいないはずだ。
 
オレが白菜を7個買って、
おばあちゃんのリヤカーが白菜7個ぶん、
軽くなればイイじゃないか。
 
見ず知らずのおばあちゃんだけど、
オレが買った白菜7個ぶん、
おばあちゃんの帰りの歩幅が大きくなれば、
情に流されるのも悪いもんじゃない。
 
 
 
 
 
母親に散々文句を言われたあと、オレは、
おばあちゃんがオマケにくれた白菜を持って
部屋に入った。
 
冬野菜の美味しさが解らないオレの
白菜の楽しみ方といえば、
 
「武者小路実篤は、白菜の絵は描いたのだろうか」
 
そんな事を考えながら、
おばあちゃんの白菜を、
ただ、ゴロゴロと転がす事だけだったけど、
それでも、十分楽しかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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