事件は、とあるマンションの10階にある部屋で起きた。 
その部屋の住人である女性が、
鈍器のようなもので頭部をメッタ打ちにされ、死んでいたのだ。
 
この事件も、始めは毎日起きる殺人事件の1つと考えられたが、
すぐに、この事件は特異なものであるとの認識が
警察関係者の間に広がり始めた。
 
密室。
この事件は密室殺人だったのだ。
 
「寺さん、窓は全部閉まってますよ。
 玄関も鍵がかかっていて第一発見者の管理人が開けたんだ。
 完璧な密室殺人ですよ、こりゃぁ」
 
窓の1つ1つを調べ終えた徳本刑事は、
先輩刑事、寺岡に窓の様子を告げた。
 
「窓も玄関も閉まっていても、
 他に人が出入りできる所があるかもしれないだろう」
 
寺岡刑事はそう言いながら、
自分も、窓の1つ1つをガタガタと揺らして異常がないかを確かめる。
 
「無いんですよ、それが。
 それに、マンションの10階ですからね。
 外から入るのは困難なうえに窓にも鍵がかかってるんだ。
 この部屋に入り込むのは不可能ですよ」
 
「なら、犯人は、
 煙の様にこの部屋に侵入して
 煙の様に消え去ったとでもいうのか?
 完全な密室殺人なんて有り得ないんだよ」
 
寺岡は、焼け糞気味になっている徳本を諭す様にそう言ったが、
実際は寺岡にもこの現状を打破する策も知恵もなにも無く、
ただただ鍵のかかった窓をガタガタと揺らすばかりだった。
 
そして、時間ばかりが過ぎ、寺岡と徳本の想いとは裏腹に、
マンションの外の空気は、
訪れる夜にひんやりと冷やされていくのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
翌日。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
犯人は自首した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索