ウチの店には、いろいろな映画のフィギュアや
いろいろな映画に関連したグッズが置いてある。
その中の1つに『ロードオブザリング』があり、
ウチの店には、そのグッズもいくつか置いてある。
しかし、困った事にオレは、
『ロードオブザリング』を1度も観た事がない。
どちらかというと単館系の映画が好きなオレは、
ああいった超話題作的な映画が苦手なのだ。
だからオレは、
『ロードオブザリング』をちぃとも知らない。
知っているのは、レゴなんとかという人のみである。
こういった映画のグッズを扱う仕事をする以上、
これは致命的なことで、
お客にその商品の説明を求められたとき
困ってしまうのは目に見えてるというものだ。
ソレは解っていた。
解っていたのだがオレは、
なんとなくメンドクサクて、
『ロードオブザリング』を観るのを怠っていた。
そんなオレに、危機的状況が訪れる。
客:「すみませ〜ん」
『ロードオブザリング』の
グッズが置いてある場所に張り付いていた客に呼ばれた。
ゲル:「はーい」
(うわっ、やっべぇよ。『ロードオブザリング』の棚だよ)
客がいる場所は、
『ロードオブザリング』に出てくるらしい
いくつかの剣のミニチュアが置かれている場所だった。
オレが、最も苦手とするコーナーである。
客:「これって、『ロードオブザリング』の剣ですか?」
ゲル:「はい、これは
『ロードオブザリング』の剣のミニチュアですね〜」
知らない事も、
さも知ってるかのように話す。
ソレがプロというものであろう。
客:「これって、いくらくらいするんですか?」
ゲル:「これは、5700円ですね」
客:「あ〜、結構するんですね」
ゲル:「そうですねー。
時々、1種類づつまとめて買う方もいるんですけどね」
ハッタリである。
1本5700円もする剣を
5本も6本もまとめて買うヤツなんて、そうはいない。
しばらくの間黙って、
数種類ある剣を1本1本手にとって見ていた客が
ふいにオレに質問した。
客:「フロドはどれですか?」
ゲル:「フロ???」
客:「フロドはどれですか?」
ゲル:「・・・・・・」
ピンチ!!
オレ、ピンチ!!
フロドって何!?
映画を観てないから、さっぱりワカラン!!
しかし、オレはプロである。
プロの販売員である。
プロである以上、
「解りません」なんて事は言えない。
プロである以上、
嘘でも知ったふうな答えを繰り出さなければイケナイのだ。
さぁ、どうするオレ!!
ゲル:「ああ、フロドですか〜」
適当に相槌を入れてははいたが、
内心ではオレ、パニック。
だいたい、フロドがナニを現す言葉さえかも知らぬのだ。
こうなりゃヤケである。
こうなりゃイチかバチか、である。
ゲル:「フロドはですねー、
えーと、
コレとコレと・・・」
客:「えっ!?」
えっ!?違うの!?
ゲル:「あ、いや、コレです!!」
適当に差し出す1本の剣。
客:「あ、ホントだー。
これですねー」
おおおっ、
適当に差し出したのがフロドだったとは、さすがオレ!!
ナイス判断オレ!!
客は、オレが差し出したフロドを買っていった。
仕事が終わって帰り、
その日の出来事を思い、
さすがにこれではマズイだろうと思い、
『ロードオブザリング』を借りて帰った。
ああああ。
フロドって人だったのね。
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●魔美様。
ウチの店って、2階建てなんですよー。
そんで、連絡とるのに
トランシーバーが使われてるんです。
いや、地声でもじゅうぶん聞こえる範囲なんですけどね。
カッコつけてトランシーバー(笑
黒猫、
目が合うともう、
その日はヤバイ感じでいっぱいになります。
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