バンド。

2004年8月6日 日常
 
 
オレ達が高校生だった頃には、
『バンドブーム』と呼ばれるちょっとしたブームがあった。
 
ソレは、
“とりあえずバンドさえ組んでりゃ女の子にモテる”
という時代で、オレが住む田舎町でも、
“自称バンドマン”を名乗る若い男や、
ギターケースを抱えた学生達が
そこらじゅうに溢れかえっていた。
 
中には、本気でミュージシャンを夢見たヤツもいるのだろうが、
大半は
“モテたい”
その一心でバンドをやっていたのだと思う。
 
オレもその流れに乗った男の1人で、
“モテたい”
そんな思いで集まったヤツらとバンドを組んだ。
 
学校以外の有り余った時間は、バンドの練習と、
その練習のスタジオ代にあてるお金お作る為に
ひたすらアルバイトをしていたと思う。
 
まぁ、オレらが組んだバンドなど大半がコピーで、
オリジナルの曲など数えるほどしかなかったのだが。
 
 
 
 
 
オレ達のバンドは、
今で言うところの“ビジュアル系”というヤツであろうか、
メンバーは、ライブ当日になると、
行きつけの化粧品屋さんのオネイサンに
派手なメイクをしてもらった。
 
そして、その化粧をしたまま、
チャリンコでライブ会場まで疾走。
 
顔を塗りたくった高校生が集団で、
街中をチャリンコで疾走しているのだ。
 
はたから見れば異様であったろう。
 
ベースのヤツなどは、
モヒカンヘアーを赤く染めていたから(高校生で!)、
異様というよりは恐ろしいものだったかもしれない。
 
そしてライブ会場では
派手な衣装に身をくるんだり、
裸で演奏してみたり、
ボーカルが、観客の女の子と長〜いキスをして歌わなかったり、
ボーカルとベースがキスをしてみたりと(男同士!)、
今考えれば、アホなライブを繰り広げていた。
 
 
 
 
 
そんなオレ達のバンドも、
努力の甲斐があっての事か
“モテたい”という思いが神に通じたのか、
そこそこ人気が出てきた。
 
全部自腹で買っていたライブのチケットも
買ってくれる人がでるようになり、
明らかに自分達目当ての客も入るようになり、
なにより、女の子にキャーキャー言われるようになった。
 
メンバーにもそれぞれ彼女ができ、
地元のタウン誌が行った人気投票でも
6位に入って取材を受けるなど(自分達でも投票したが)、
まぁ、“モテたい”一心でスタートした
不純な動機のバンドにしては、そこそこの人気だったと思う。
 
 
 
 
 
そんなオレ達は、
自分達が住む市じゃないところ、
隣の市や、そのまた隣の市からも
ライブに誘われるようになった。
 
そこでオレ達は、『PET’S』を名乗るバンドと
数回、同じステージに立った。
 
『PET’S』は、
やはりオレ達と同じ高校生で、
4人のメンバーで構成されており、
ブルーハーツのコピーから始まって
オリジナル曲も数曲持つ、パンクバンドであった。
 
ボーカルのヤツは、
いっつもバイト先の『出光』のガソリンスタンドの
ツナギでステージに立つ、デブであった。
 
とてもイイヤツで、
初めて会ったその日に友達になった。
 
何回目かに同じステージに立ったその帰り、
『PET’S』のボーカルは、
神妙な面持ちで、オレに話し掛けてきた。
 
 
 
 
 
「オメーらのバンド、人気あっていいよな。
 オレらのバンドって、全っ然、女の子に人気ねぇの。
 バンドやってるとフツー、モテんじゃん」
 
 
 
 
 
オレは、なんと言っていいものかわからず、
ただ、
 
 
 
 
 
「そんなことねーよ」
 
 
「オメーらだってかなりウケてたよ」
 
 
 
 
 
そんなアリキタリな言葉を言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
だが、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
心の中では、密かにこう思っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(ボーカルのオメーが
 
 デブっちょだからじゃね?)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その夜、
オレ達2つのバンドは、
福島県で一番大きな駅、郡山駅の中で、
地べたに座りながら、最終電車がくるまで酒を飲んだ。
 
人が少なくなった時間なので、
オレ達はバカ騒ぎをした。
 
みんなヘロヘロに酔った。
 
そのうち、『PET’S』のボーカルは
何を思ったか、
“駅の構内で走りながら服を脱いで、全裸になる”
という荒業を始め、
オレ達は、面白がってソレをビデオに収めていた。
 
 
 
 
 
駅の中を、全裸で走る『PET’S』のボーカル。
 
 
 
 
 
汗をかきながら、駅の中を
チンコ丸出しで疾走するデブ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「お前ら、何やってんだ!!」
 
 
 
 
 
そんな声が響き渡り、
そちらを向くと、警察がこちらに寄ってきた。
 
 
 
 
 
オレ達のバンドのメンバーは、
慌ててその場を逃げ出した。
 
 
 
 
 
その時オレは、逃げながら一瞬チラッと見た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全裸のデブが、警察に取り押さえられているところを。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オレ達のバンドのメンバーは、
駅の近くのレストランに逃げ込み、
追ってくるはずもない警察官が来るのでははいかと
ドキドキしながら、普通の客になりすまして、
全員、食いたくも無いタラコスパゲティーを食った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『PET’S』のデブが、あの後どうなったか。
 
その後、オレ達の間で一度も語られた事は無い。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
*************
 
 
●魔美様。
 
あははははははははは!!
ショック!!
女の子には乳毛を処理してほしかった!!
 
今年の福島の花火大会の当日には、
同じ時刻に北島三郎のコンサートがありました。
サブちゃんのコンサートは、
花火大会に負けてガラガラだったそうです。
オレだったらサブちゃんだけどなー。
 
 
 
 
 

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