舞浜駅を降りると、そこはディズニーランドだった。
 
 
そう、オレは、
前の日記にも書いた通り、ディズニーランドにやってきたのだ。
ディズニーランドに来たと言っても、
ただ、アトラクションを楽しみに来たのではない。
ディズニーランドを楽しむという目的の他に、
オレには、

“くまのプーさんに制裁を加える”

という目的があった。
 
 
 
早速、園内に入り、プーを探す。
スペースマウンテンに行きたいという友人をほっぽって、
プーを探す。

広い園内、
プーを探し出すのは困難かと思われたが、
意外な程にあっさりと、ヤツはオレの前に現れた。

黄色い体毛。
赤い服。
ただの点でしかない目。

そう、アイツである。
 
 
「プー発見っ!!プー発見っ!!」
 
 
目標を見つけて、俄然、盛り上がるオレ。
あきれ返る友人。
 
 
 
その時プーは、
多くの来場者に囲まれながら愛嬌を振りまいていた。

プーの振りまく愛嬌に、
後から後から人が押し寄せてくる。
 
 
「イカン!!
 みんな、プーに騙されている!!
 早くプーに制裁を加えて、みんなの目を覚まさなければ!!」
 
 
“プーさん”などと、
“さん”付けして呼ぶ必要はないんだよ、と。

プーは、
ジツは、甘えん坊の中年なんだよ、と。

だいたい、プーの格好といったらどうだ。
下半身丸出しではないか。

この熊、露出狂中年なのだ。
 
 
 
オレは早速、行動に出た。

作戦はこうだ。
まず、みんなに愛嬌を振りまいているプーの後ろから
ソロソロと近づき、人込みにまぎれてひざカックン。
バランスを失って無防備な状態になったプーのおケツめがけて、
オレの全身全霊を込めたカンチョーを一撃。

きっとその時、プーは、
中年の本性を剥き出しにしてのたうちまわるだろう。

カワイイ仮面も剥がれおちる。

オレは、ソロソロとプーの背後から近づいた。
プーが、いくら方向を変えても、
常にプーの背中側から近づいた。

殺気はなるべく消す。
しかし、オレの殺気は消すに消しきれず、外に漏れ出す。
その殺気にさえ気付かないプー。
動物としても失格だ。

ふと気が付くと、
プーの横には、係員のオネイサンが、
まるで女房のようにべったり付いている。

くそっ、プーめ。
とうとう人間の女まで手篭めにしよったか!!

事は急がねばなるまい。

オレは、スゥーッとプーの背後につけた。
 
 
 
わずか10cm。
オレは、プーのすぐ背中につく事に成功した。

あとは、ひざカックンをお見舞いして、
バランスを失ったプーに、
内臓がずれるほどのカンチョーを喰らわすのみ。

オレは、膝先に神経を集中し、
プーの動きにタイミングを合わせた。
 
 
 
 
 
せーの!!ひざカックン!!
 
 
 
 
 
しかし、オレのひざカックンには動じないプー。

なにぃっ!!
オレのひざカックンが通用しないのか!?

しかし、すでに作戦は開始されている。
今さら中止にする事など出来ないのだ。

オレは、両手を組んで人差し指だけピンと伸ばして
カンチョーの態勢を整えると、
その目標となるプーの肛門を見極めようとした。

しかし、ここで更なるハプニングが。
  
 
 
 
 
 
プーの肛門がわかんねぇっ!!
 
いったいどこがコイツの肛門なんだ!?
 
ちうか、肛門あんのか!?
 
 
 
 
 
オレはひるんでしまったが、
気を取り直すと、プーの肛門とおぼしき辺りめがけて、
最高の一撃を加えようとした。

と、その時。
 
 
 
クルッ
 
 
 
プーが振り返ったのだ。

振り返ったプーとオレ、目が合う。
プーは、白目の無い目で、こちらを見つめている。
オレの両手はカンチョー態勢準備万端。
今更言い分けのできないほどの状態になっている。

その時オレは、『グリズリー』という昔の熊の映画を思い出した。
凶暴な熊が、馬の首を一撃で吹き飛ばすシーン。
オレも、プーに首を飛ばされるのか。
目と目が合った時間は、一瞬のようでいて、とても長くも感じられた。
 
 
  
しかしこの後、プーは意外な行動に出た。

群がる家族連れや子供達を後回しにして、
自らにカンチョーを喰らわせようとしている
オレの肩を抱いてきたのだ。

沢山のギャルや坊ちゃん嬢ちゃんを無視して、
この31歳の、汚れきった男の肩を!!
 
 
 
 
 
プ、プー・・・さん・・・
 
 
 
 
 
優しかった。
プーさんの目は優しかった。

表情の変らないはずのプーさんが
トビキリの笑顔をオレに向けてくれた。
 
 
 
 
 
カ、カワイイなぁ・・・
 
 
 
 
 
オレは、
当初の目的も忘れ、
ただただプーさんにヤラレてしまった。

ゴメン!!
プーさんゴメン!!

オレの眼は節穴だった!!

そんな気持ちでいっぱいだった。

あの、真っ黒なプラスチックの瞳に見つめられただけで、
ギスギスしたオレの心は、ほんの少し洗われたようだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
プーと別れた後、友人が言い放った。
 
 
 
「あたし、プーって好きじゃないんだよね。
 なんか、あんまりカワイクないよね。
 ねぇ、早くスペースマウンテン行こっ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
貴っ様ぁっ!!

プーが好きじゃないとは何事かっ!!

ちうか、“プー”とは何事かっ!!

“プーさん”と呼べぃっ!!
 
いや、“プー様”と呼べぃっ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ええっ!!
 さっき、ゲルタ君だって、
 プーが好きじゃないって言ってたじゃん!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
薄汚れたオマエと一緒にすんなバカッ!!

ちうか、スペースマウンテンなぞ、誰が乗るかっ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ええ〜、じゃぁ、どこに行くの!?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『プーさんのハニーハント』に決まっとろうがっ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そしてオレは、
嫌がる友人を連れ、ファンタジーランドへとダッシュで向かい、
並びに並んで『プーさんのハニーハント』を楽しんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「じゃ、次はスペースマウンテン・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『ハニーハント』、もう一回乗るぞ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そしてその後、オレは、
お土産に

「プーさんのハチミツ」
 
「プーさんのハチミツキャンディ」
 
そして、
プーサンの似顔絵と
「Pooh」という文字の刺繍が入った、
家でしか着れないようなトレーナーを買った。
 
 
 
 
 
*************
 
 
メッセージをくださった方、
すみません、後日書きます!!
 
 
 

 

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