気が付けば、
いつの間にかオレの傍には1人の女がいる。
いつの間にか、ウチに馴染んでしいまっている。
オレが遊んで帰ってくるといつの間にかウチに来てて、
オレの両親と一緒に、フツーにご飯を食べてたりする。
そして、帰ってきたオレに向かって、
お茶碗とお箸を持ってオレの両親と一緒にこう言うのだ。
「おかえり〜」
彼女は、仕事が休みになると必ずウチにやってくる。
遠い街から約40分、車をとばしてやってくる。
そして、0時になるとまた、
車をとばして遠い街まで帰って行く。
だからといってベツに、
お互いに“そういった言葉”は口に出さない。
ただ、一緒にいるだけ。
一緒にただ、
「Mステに出た時の、Def Techの無駄な盛り上がりの真似〜」
などと言って、ゲラゲラ笑っている。
いつの間にか、それが当たり前のようになっている。
はじめは、そんな彼女がウザかった。
お世辞にもキレイとは言えないし、
お世辞にもスタイルがいいとも言えない。
早い話が、ダイエットを必要とする身体だ。
だからオレは、彼女に対して酷いことも言った。
「ベツにオレは、
オマエと付き合ってるワケでもなんでもないんだからな?」
そういうと彼女は、決まってこう答える。
「知ってるよ」
だから彼女は、オレがどこで遊んでも文句も言わないし、
どれだけ遅く帰っても、勝手にウチに来て待っている。
冷静に考えると相当恐い話だが、
いつの間にかオレは、こう思うようになっていた。
「彼女は待ってるかな?」
いつの間にか侵食されてしまった気分だ。
これは、オレのエゴなのかもしれないが、
多分、彼女はオレに対して
“そういった感情”を持ってくれているのだと思う。
こんな、身体がボロボロの、
いつ死んでもおかしくないような男の傍にいつもいるのだから、
“そういった感情”を持ってくれているのだと思う。
口には出さずとも、
ソレに気付かない程オレもバカではない。
でもオレは、知らないフリをした。
知っていて、それには触れようとはしなかった。
そしてただ、そのヘンな関係が続く事を望んだ。
卑怯な男と言われても返す言葉もない。
オレが自分の気持ちと、
自分が卑怯な男だと気付くまで、
オレは、彼女を待たせていたのかもしれない。
先日オレは、
いつものように0時になってウチに帰る彼女に言った。
「オレ、好きとか付き合ってるとか、言ったことないよな?」
「うん」と、彼女が答える。
「それなのに、そんなヤツんとこまでわざわざ通ってくれてんだ」
「うん」
「なんで?」
卑怯なオレは、彼女に訊いた。
「ベツに。迷惑?」彼女が答える。
「いや。
そういうんじゃないけど」
すると、彼女が突然泣き出した。
「だって、好きって言ったらもう会えないかもしれないじゃん」
お世辞にカワイイとは言えない彼女が、
泣き顔でいっそうブサイクになる。
「だってあたし、ブスなんだもん」
そう言った彼女の顔を見た途端、オレの中で何かが弾けた。
オレは、彼女に訊いた。
「オレの病気、知ってるよな?」
「うん」
「オレ、早死にするかもよ?」
「うん」
彼女は泣いている。
そんな彼女にオレは、
今まで彼女に対して出した事のない“そういった感情”を
最高最大の表現でしてみせた。
「そのうち、オレと結婚するか?」
・・・・・・
「え〜〜〜」
えっ!?悩むの!?
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