苦シカッタ恋愛ノ話 (前編)
2005年9月2日 日常男三十代ともなれば、誰だって、今までの人生の中に、
悲しい結末に終わってしまった恋愛の1つや2つはあるものだ。
仲間が集まればその人数ぶんだけ辛く苦しかった恋愛の話も増える。
先日、集まったオレ達は、
何がきっかけでそうなったのかは知らないけれど、
過去に経験した辛い恋愛の話を笑いながら告白しあっていた。
名付けて、『過去の傷を舐めあう会』。
テーブルに届いたばかりの
あつあつのじゃがバターを食べながら、昔話をする。
その傷さえ、笑い飛ばす事ができる歳になったのだ。
仲間達の告白は、
高校からの付き合いである以上、知っているものが多かったが、
中には、オレの知らない告白もいくつかあった。
オレ達は、仲間の口から出る初めて聞く恋愛話に、
まるで、現在進行形で進む恋愛の話を聞くかのように飛びつき、
そして笑う。
マサの、中華料理店のオネイサンに一目ぼれをして、
その店に通いつめたあげく、フラれた話。
タケの、高校時代に1人の女の子にフラれまくったけれど、
卒業式の日に付き合う事になり、
すぐさまできちゃった結婚をしてしまった話。
カズの、遠距離恋愛の話。
そんな話が告白される中、オレは、2つの話を告白した。
1つは、高校時代の3年間に、同じ女の子に3回フラれた事。
そしてもう1つは、とてもイヤな別れ方をした彼女の事だ。
♪♪♪♪♪
彼女との紹介話があったのは、今から10年以上前の事だ。
共通の友達であるマキが、彼女にいろんな写真を見せていたところ、
オレを紹介してくれ、という話になったらしい。
彼女は、外見は少しヤンキーっぽかったけれど、
喋ってみるとおっとりした感じで、
そして、肌が病的なまでに白くて、
オレは、たちまち彼女を好きになり、すぐに付き合い始めた。
彼女の家は、ウチから車で1時間ほど離れた田舎町にあったが、
オレは、彼女に会える事を考えれば、
そんなことはさほど気にはならなかった。
オレは、毎日のように彼女の家に彼女を迎えに行き、
そして遊んでから、夜中になって彼女を送るという生活を続けていた。
夜中に往復2時間をかけて送っていき、3時間ほどだけ睡眠をとって
次の朝早くに仕事に行くという生活は少しキツかったけれど、
オレは、彼女の為に頑張れた。
ある日、彼女が
「今日、お兄ちゃんが帰ってくるの」と言った事があった。
オレは、彼女にお兄ちゃんがいた事なども知らずに、
「どこかに行ってたの?」なんて訊いてみる。
すると、彼女の口から出た言葉は意外であった。
「ムショ」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・「ムショ」て。
刑務所である。
彼女のお兄ちゃんはそのスジの人で、
ある罪を犯して何年か服役していたのだ。
それでも彼女は、
お兄ちゃんががこっちの世界に帰って来ることがうれしいらしく、
オレは、「お兄ちゃんに紹介するから」と彼女に誘われるままに、
数回、その怖いお兄ちゃんと一緒に食事もした。
怖かったけど頑張った。
ダイスキな彼女の前では、それすらも些細な事だったのである。
(下に続く)
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