オレ ノ 旅 。(前編)
2006年4月16日 日常 コメント (2)「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」
そう言ったのは確か、松尾芭蕉だったろうか。
芭蕉は、人生というモノを
「旅そのものである」と定義したのだろうけど、
現代に生きるオレは、
ソレをリアルに感じられる程の柔らかな思考力も無く、
「もっと、リアルに“旅”というモノを体感したい」
「“旅という現実”に身を置きたい」
そういう欲求ばかりがだんだんと膨らんでいく。
きっと、みんなそうなのだ。
人は皆、“時”を旅する旅人なのだけれど、
そんな、“時”などという曖昧なモノよりも、
もっと、“リアルな何か”を求めて旅をするのだろう。
だからオレも、旅に出た。
ベツにソレは、「自分探し」なんてメルヘンなモノでもなければ
「現実からの逃避」などというモノでもない。
むしろソレは「違う現実」を見る為の旅であるのだけれど、
オレの旅に、そんな理屈などはいらない。
そんな意味付けなどが、バカバカしく思えてくるような旅。
気の向くまま、行きたい所に行き、
食べたいモノを食べ、
寝たい時に寝る。
そんな、オレの旅。
3泊4日で、移動は車。
そんなモノを「旅」と言ったら聖俳は怒るかもしれないけれど、
ソレは、オレにとっては“旅”という“リアル”であった。
12日の午後、仕事を終えたオレはその足で
福島を出発し山形を抜けて新潟の海へ。
日本海を臨む頃にはすでに日は落ちて辺りは薄暗く、
オレは、そんな灰色の海を見ながら一息ついた。
オレは、旅に出る前に、
「日本海側の道路を、ただひたすら、行ける所まで南下したい」
そう思っていたのだけれど、ふと、なんとなく、気が変った。
「いったん北上してから南下しようか」
たったそれだけの“なんとなく”でオレは、
計画を変更して日本海に面した道路を北上する。
北上と言っても、どこまで“北上”すればいいか、
などとはベツに決めない。ただ北上。
オレは、テキトーにアクセルを踏みながら、
気が付いた時には、すでに夜も遅く、
オレは、いつの間にかに訪れていた秋田県で宿をとる事にした。
「宿をとる」と言っても、オレがとる宿は、モーテルである。
本来ならばソコは、愛し合うカップルや、
そうでない、ただ欲望に満ちているカップルがアハンウフンする場所。
オレは、ソコに1人、足を踏み入れる。
気軽に入れる事や、金額的なことを考えて、
オレはモーテルに1人で泊まるワケだが、
やはり、モーテルに1人でいると、
他の部屋ではアハンウフンなのかと思うと、
なんだか切なくなってしまう。
そのうち、切ないどころか
「ちきしょう、テメェら、アハンウフンやってんじゃねぇ!!」
などと思えてくる。
醜い嫉妬である。
だいたい、モーテルに1人で泊まるオレが悪いのだけれど、
1人で寝ようとすればする程、他の部屋から
アハンウフン聞こえてきそうで、なかなか眠れなくなってくる。
そして、「ちきしょう、アハンウフンしやがって!!」となる。
大人気ない責任転嫁。
しかし、そんな事を思っていても、
ソレは、オレが望んでいたリアルの一面。
仕方なくオレは眠りについたのだけれど、
オレは、そんなカップル達や、
これからアハンウフンするだろうカップルに対しての
ささやかな抵抗として、モーテルに備え付けてあるガウン、
男用の水色のガウンと女用のピンクのガウンがあったワケだが、
オレは、その、ピンクの女用のガウンを着て眠ってやった。
13日の朝、目覚めたオレは、
モーテルのベッドの枕元に備え付けられていた
3枚のコンドームを忘れずにバッグに詰め込んで、
そして、再び北を目指して車を走らせた。
秋田市を過ぎ、学校で習ったような習ってないような、
名前だけをなんとなく覚えていた八郎潟を
ぐるっと回り込んで男鹿半島へ行く。
途中、「秋田といえば比内鶏だろう」と思い、
650円の親子丼を食べた。
食後、車を北へはしらせながらオレは、
果たして、「650円で比内鶏の親子丼が食べれるのだろうか」などと
少し気になったのだけれど、
「秋田で食う鶏肉は比内鶏に決まっている!!」と、
自分の中の疑問を、半ば強引にねじ伏せる。
そしてオレの車は、世界遺産の白神山地を越え、
青森県までやってきていた。
秋田と青森の県境に車を停めたオレは、車を降りる。
そして、あたりの景色をみまわしながら深呼吸。
やはり、そこの空気は違った。
冷たい空気が、肺に染み込んでいくのがわかった。
深呼吸を終えるとオレは、すぐさま車に乗り込む。
そして、Uターン。
青森県の滞在時間、わずか2分。
オレは、
今度は一路、日本海側の道をひたすら南下し始めた。
今度こそ、南下、である。
どこまで行けるのかわからない。
その時、車を南に走らせているのはまさしくオレのリアルであったが、
時間がくればソレは、また、
ベツのリアルに強引に打ち切られてしまう。
オレは、そのリアルから逃げるように、車のスピードを上げた。
今のリアルが続きますように。
ベツのリアルがやってきませんように。
オレは、そんなことを考えながら、
それこそが、「逃避」というモノではないかと思った。
コメント
今日ほど、朝日新聞をとっていた事を喜べた日は、ありません。
おおお、kaj様もですか!!(笑
ウチは地方紙ですが、それでもやはり、
あのコメントは載ってましたよ。
もう、見つけた時には大喜びでした。