オレ ノ 旅。(後編)
2006年4月16日コメント (6)2日目の宿を、オレは、
山形県にあった海が眺められるモーテルにとった。
そして14日の朝からまた、
日本海を臨みながらただひたすら南下。
カーステレオからは、奥田民生の『イージュー★ライダー』が流れる。
「♪僕らは自由を 僕らは青春を
気持ちのよい汗を けして枯れない涙を
幅広い心を くだらないアイデアを
軽く笑えるユーモアを うまくやりぬく賢さを」
オレは、民生の声に自分の声を重ね合わせて
ただひたすら、南へと車を走らせた。
途中、新潟県で『恋人岬』という看板を見つけた。
オレは、北朝鮮に拉致された被害者の方が帰国後、
そこを訪れていたのをTVで見た事を思い出し、
その恋人岬に寄ってみることにした。
そして、後悔。
恋人岬はやはり、男が1人で来る場所ではなかった。
オレにとって、アウェイであった。
空気が違った。
当日は小雨が降っていたのだが、
そんな雨にもかかわらず、数組のカップル達が恋人岬を訪れていた。
1つの傘に、恋人達は窮屈そうに身体を詰め込んでいる。
でも、その窮屈さは、恋人達にとってはむしろ、
嬉しい窮屈さなのだろう。
誰しもが、微笑んでいた。
「けっ、別れればいいのに」
オレは、心の中でそう呟くと、逃げるように恋人岬を後にする。
そしてまた、オレは、車を南に向かって走らせた。
「♪カニ 食べ 行こう
はにかんで 行こう」
カーステレオから今度は、
PUFFYの『渚にまつわるエトセトラ』が流れた。
一人旅なのをいいことに、車内でデッカイ声で歌うオレ。
助手席に誰かいれば遠慮もしようものだけれど、
助手席に乗ってくれる人などいやしない。
オレは、対向車の目も気にせず大口を開けて
「♪カニ 食べ 行こう〜」と、PUFFYの声に自分の声を合わせた。
と、突然、オレの頭の中に、ある考えが浮かぶ。
「カニ、喰いてぇなぁ・・・」
カニである。
カニを喰いたくなったのである。
考えてみれば、そこは新潟、カニの本場。
ここでカニを喰わずして、新潟に来たと言えるだろうか。
オレは、カニ料理の店を見つけると、
金額的なモノなどは考えずに、すぐさまその店に入り、
そして、カニを喰った。
カニ丼、カニ汁、焼きたらば等々。
オレは、1人で5000円以上のカニを喰った。
カニを喰らってやった。
オレは、今まで生きてきた中で、これほどのカニを
いっぺんに食べた事は初めてであった。
普段は小食なオレなのだが、その時ばかりは
腹が破裂するのではないかと思えるくらいに喰ってやった。
そしてまた、オレは、車を走らせる。
しばらくすると、腹が猛烈に痛くなった。
そして、すさまじい吐き気。
きった、カニにヤラレたのだと、思う。
いや、カニが悪いのではなくて、喰いすぎたオレが悪いのだ。
オレは、道の駅のトイレに駆け込むと、全てを吐き出した。
5000円以上のカニを喰って、ソレを吐いてしまった。
言わば、「5000円以上のゲロ」である。
オレは、あまりの気持ち悪さに、
道の駅に車を停め、しばらく休むことにした。
再び車を走らせ、富山県に入ったのは、
もう、夜もだいぶ過ぎた頃であった。
右手には海があるはずなのだけれど、何も見えない。
昼に喰ったカニの気持ち悪さが尾を引いていたオレは、
富山県に入り、しばらく走った入善市という所でついにダウンした。
本来ならば、もっと早く走って、もっと富山を進みたかったのだけれど
夜が深くなるのに合わせるように身体にのしかかってくる疲れに、
とうとう、根をあげた。
そしてオレは、国道沿いにある「じゃんけんぽん」という
ゆる〜いネーミングのモーテルに泊まった。
そしてその夜は、大きすぎるベッドに1人で寝た。
例によって、女用のガウンを着て。
15日の朝。
この日は、福島に帰る日である。
思えば、ものすごい距離を走ったものだ。
福島から青森に入り、そして、富山まで。
言わば、「福島発−青森経由−富山」。
なんと恐ろしく不経済なのか。
しかし、そんなことはどうでもいい。
こういう事は、金や時間の問題ではないのだ。
モーテルをチェックアウトする時、
金を受け取りに来たおばちゃんが、
顔の見えない、壁の向こうで言った。
「また、ご縁がありましたらお出でください」
そのおばちゃんの言葉だけでも、
オレは、富山まで来た甲斐があったと思う。
本当は、もっとやりたい事があったのだけれど、
その言葉だけでも、オレの旅の、
あるようで無いような目的の半分は、満たされたと思った。
そしてオレは、福島に帰る。
いつものリアルに戻るために。
途中、何度も帰りたくないと思ったのだけれど、
「また来ればいいのだ」
そう自分に言い聞かせて、オレは帰り道を急いだ。
普通の日常生活をリアルと考えれば、
旅先にあるのもまたリアル。
その旅を逃避と考えるならば、
その逃避というものも、案外イイものであるな、と思った。
コメント
そしておかえりなさいまし。
何かと物事に意味をつけたがるのは人間の性?
すべての物事に意味をつけるのは自分だ、とするなら
現実なんて個々の自己満足でしかないのかな、
なんてことを考えてしまったり。
無駄な現実なんてない。
以上、真面目コメントでした。
炊飯器!
まず、先日の非礼を謝りたいと思います。2週間ほど前でしょうか、タイトル‘イロイロ‘にてコメント出しました健康茶ですが、わたくしPC初心者でして、こういった類の行為は初めてで「こんなんでオレの文章が載るんかい?載らないんかい?」と、挨拶なしに無礼なコメントを出しました。とても後悔しています。ごめんなさい。
さて、
じつは、
なんとわたくし健康茶、
「じゃんけんぽん」の町の住人です!!!!!
ゲルタさんの旅の終着点の町にわたくし住んでます。
あの黄色くて小さなモーテルじゃんけんぽんは、我が町唯一のラブするホテル。父ちゃんも母ちゃんも、兄ちゃんも姉ちゃんも、イヌやネコまであのモーテルです。
いやあ、ゲルタさんとリンクしましたよ。
長くなりました。どしても伝えたい衝動に駆られました。
応援しています。
ずっとゲルタさんの日記は読ませてもらっていましたが、気の強い割には根性なしなので、ただ読んで笑わせてもらってるだけでした。
ゲルタさんの日記を読んで言いたいことがあります。
カニは死ぬほど食えば吐きます。
ほんと気持ち悪いですよね。
主人の実家がカニで有名なところなので時々送ってくれるのですが、また大量に送ってくるのですね。主人はカニはほとんど食べないし、幼い子供は食べるって言ってもほんの少しだし。と言うわけで貧乏性の私が「もったいないっっ!!」と
死ぬほど喰ったわけです。
その夜はホント気持ち悪くて死にそうでした。
どうせ吐いてしまうなら腐らせてしまったほうがましだわ。。。と情けない思いでした。
日記を読んでそれをまざまざと思い出したので思わずコメントをさせてもらいました。
また楽しい日記で笑わせてください。
おおお、真面目コメントありがとうございます!!
ほんと、何にでも意味をつけたがるのは人間の性ですよね。
そんで、無駄な現実なんて無い。
まったくその通りだと思います!!
や、なんかスッキリしました!!
ありがとうございます!!
●健康茶様。
おおお、コメントありがとうございます!!
や、そんな非礼だなんてとんでもないです!!
というか、健康茶様、
「じゃんけんぽん」の街にお住まいなのですか!!
おおお、スゲェ!!なんか感動!!
オレ、あそこの106号室に泊まったんですよー(笑
もう、すっかりお気に入りなので、次もまた、
「じゃんけんぽん」に泊まろうと考えてます!!
や、リンクしてくださってありがとうございます!!
よろしくお願いします!!
●岡ひろみ様。
はじめまして!!
コメントありがとうございます!!
や、オレも実は、岡ひろみ様のお名前を拝見した時に
「あ、エースを狙ってる!!」と思いまして
日記を覗かせていただいてました。
そんな方からコメントをいただけて嬉しいです!!
カニ、やっぱ食いすぎると気持ちわるくなりますね。
なんでもそんなのかもしれないけれど、
カニだと、あの独特のニオイが鼻の奥について
いつまでもカニ臭くてたまらなくなりますよね。
岡ひろみ様も同じような思いをされてたのですね!!
ちょっと感激!!
ウッカリーと申します。1ヶ月程前友人に薦められ、読んでみるとすぐにゲルさんのとりこになっちゃいました。毎日笑いをこらえて読んでいます。
わたしは富山県の魚津という所に住んでいます。ゲルさんが来られた入善とは結構近くてわたしもよく遊びに行くので、なんか嬉しかったでーす。
あと実はわたしウッカリーはゲルさんと誕生日が一緒なんですよ〜!もうすぐですね・・27日は。
なんか富山に遊びに来られたのと誕生日が同じということで勝手に親近感わいちゃってます。
これからも楽しいお話いっぱい聞かせてくださいね。
はじめまして!!ゲルタと申します!!
コメントありがとうございます!!
や、そんな、とりこだなんて!!勿体無いお言葉!!
魚津にお住まいなのですかー。道の駅でチェックした時、
「あ、魚津って知ってる!!」って思いました!!
てか、誕生日が一緒なのですか!?
おおお、スゲー!!
ホント、もうすぐですよねー。
や、こちらこそ親近感が湧いちゃいますよ!!
これからも、どうぞよろしくお願いします!!