ヤっちゃんという、オレと同い年の男がいる。
同じ年齢ではあるが、オレと違って性格はいたって温厚。
というか、物凄くイイ人。
それはそれはもう、ホントにイイ人で、
いつも笑みを絶やさず、そして、腰が低い。
オレも結構、腰は低い方だと思うのだけれど(すぐ爆発するが)、
もう、オレなんか目じゃない程に腰が低い。
なんせ、同い年のオレに対してまで「ゲルタさん」と話し掛け、
「〜です」「〜ます」と敬語を使う。
いっぺん、オレが
「同い年なんだから、敬語はやめようよ」と言ったのだけれど、
ヤっちゃんは、
「いやぁ、とても無理ですよ〜」
ヤっちゃんは、とにかくイイ人なのだ。
そのヤッちゃんが、ちょと前の事だが、結婚をした。
そして近頃、オレのウチからワリと近い場所に家を建てた。
「是非、遊びに来てくださいよ〜」
元々オレは、奥さん側の友人であったので
ヤッちゃんと会う事は年に数回ほどしかなかったのだけれど、
ヤッちゃんは、
「家が近くですし、これからは近所付き合いをしてください」
ヤッちゃんが言うほどご近所でもないのだけれど、
奥さんの友人であるという事に気を使ってるのか、
相変わらずの敬語でそんな事を言う。
そこで昨日。
オレは、新築祝いにいくつかの品を買い込むと、
ヤッちゃんの家を訪ねてきた。
新婚家庭訪問である。
“ピンポ〜ン”
チャイムを鳴らすと、すぐにヤッちゃんが出てきた。
玄関は、新しい家の匂いがする。
その日、オレたちはそこで、
たこ焼きパーティーをする事になっていた。
新しい家がたこ焼き臭くなるのはちょっと気が引けたのだが、
なんでも、奥さんの方が
「たこ焼きパーティーをしよう」と言い出したらしい。
テーブルの上には真新しいたこ焼き器が置いてある。
「今、奥さんが台所で準備してますからー」
ヤッちゃんがそう言った途端に、
キッチンの方から“チーン”という電子レンジの音が聞こえてくる。
そのタイミングの良さに、オレとヤッちゃんは笑う。
「今、奥さんが、冷凍の焼き鳥を頑張って“チン”してますから」
ヤッちゃんは、自分が結婚した相手の事を他人に話す時、
必ず「奥さん」と呼ぶ。
ソレを聞いてオレは、いつもヤッちゃんらしいと思う。
しばらくすると、奥さんに呼ばれてキッチンに行ったヤッちゃんが、
たこ焼きのネタや焼き鳥や、ビールなんかを持って、
奥さんと一緒に現れる。
「ゲルタさん、会うのは久しぶりですよねー」
元々オレとは友人の関係である奥さんが、言う。
奥さんにそう言われたオレは、笑顔で応えた。
「おう、イト、お邪魔するぜ!!」
ヤッちゃんの奥さんは、イトである。
イトとは、かつて、よくこの日記にも登場していた女で、
オレが勤めていた郵便局で一緒に働いていた、
カワイイけど、バカな女である。
結婚してしまった彼女にこう言うのも心苦しいのだが、
やはり、イトを表現するのに一番適してるのは
「バカ」という言葉だと思うので、
あえてここは「バカ」と言わせていただく。
イトとは、スカートにカピカピになったお米が付いていたりする、
愛すべき「バカ」なのである。
テーブルの上に、イトが頑張って“チン”した焼き鳥やビール、
そして、たこ焼きのタネなんかが並ぶと、
たこ焼きパーティーが始まった。
そもそもこのたこ焼きパーティの本質が
ヤッちゃんとイトの家が完成したお祝いでもあるので、
パーティが始まって早々、オレは、
新築祝いに買ってきた品々をプレゼントすることにした。
「えー、お祝いいただけるんですか!?」
ヤッちゃんは、相変わらず敬語で言う。
「うん、あげるあげる!!
やっぱ、こういうのはメデタイからね!!
オレが、プレゼントをあげちゃいます!!」
「ありがとうございます」と言って、包装紙をビリビリに破くイト。
この女はきっと、「丁寧」という言葉を知らない。
「えー、なんだろう、コレ・・・・・・あっ!!」
イトは、プレゼントの包装紙の中から出てきたモノを見て、
言葉に詰まった。
たこ焼き器。
包装紙の中から出てきたのは、たこ焼き器だったからである。
オレは、
「これからたこ焼きパーティする」っつってんのに、
すでに持ってるであろう、たこ焼き器を買っていったのだ。
「どうどう?たこ焼き器買ってきたんだけど!!
これからたこ焼きパーティーするっつってんのに、
オレ、わざわざたこ焼き器を買ってきました!!
タコ焼き器、一家に2台、みたいな。
しかもこれ、一番小さいヤツな!!
見て見て、たこ焼きを焼く穴が少ないの!!
ギャハハハハハハハ!!」
すると、イト。
「えー、たこ焼き器2つあっても、
そんなにたこ焼きやらないですよー。
何?もしかして、嫌がらせですか?」
うん、そうだよ。
しかし、ヤッちゃんの反応は違った。
「いやー、ありがとうございます。
たこ焼き器が2台あれば、
もし、僕と奥さんが喧嘩してても、
2人で別々に食べれますもんねー。ありがとうございます!!」
ヤッちゃん、とてもイイ人である。
その後オレは、
もう一つのプレゼントを2人に渡した。
ソレは、こけし。
面白半分に買ってきたこけしである。
「どう?このこけし。
なんか、イイ顔してるよねー。
なんか、阿部ナントカって職人が作ったらしい。
結構高かったんだぜー」
「うわー、あんまり欲しくなーい。
誰ですか?阿部ナントカって」
「知らねーよ」
オレとイトがそんな話をしてると、またしてもヤッちゃん。
「あ、ちょうど良かった!!
寝室あたりに装飾品みたいなのが欲しかったんですよ!!」
ヤッちゃん、ホントにイイ人である。
しかしすぐさま、イトが言った。
「寝室にこけしなんか置きたくない・・・」
コメント
そうですか〜イトさんも結婚したんですか〜。話を聞いている限りだと結婚できるのか心配だったのですがw(失礼
それにしてもヤッちゃんはいい人ですね〜
心が広いというかまさしく器が大きいですね^^
やっぱり靴下のかかとはすすけてるのかしら?(笑)
ヤっちゃんいい人すぎて涙でそうですv(≧∇≦)v
そのうちイトさんに赤ちゃんが・・・楽しみ〜!!
こけし、、、、なぜに、こけし?
イイ人でも流石に怒りますかね?w
でも電動のもチャント顔が付いてるんですよ、知ってました?
電動のも扱いは民芸品なんだそうです。
漫画で読みましたw
そうなんですよー。
イト、結婚したのです。人妻なんですよー。
ヤッちゃんはいい人なんですよー。
オレも見習いたいような優しさです。
●こっぴぃ様。
ダメっすよ、イトに憧れては!!(笑
なんせ、ホントにバカだから!!
イトに赤ちゃんが出来たら面白いですねー。
オレが子供で、イトみたいのが親だったらまず、グレますね(笑
●関西人様。
わはは!!
昔よく、イトのバカっぷりをネタにしてたので、
イトを好きって言ってくれる方が沢山いらっしゃるんですよー。
その事をイトは知らないんですけど(笑
こけし、なんか、
「こんなの貰ったら迷惑かなぁ」って思って買いました。
嫌がらせです(笑
●ボブ様。
マジですか!!
電動、顔つきもあるんですか!!
知らなかった・・・
てか、扱いは民芸品って!!
あははははは!!