その日、
友人タケから最初の電話があったのは、夜の19時頃であった。
タケ:「あ、ゲルタ?オッス、オレオレ。
今オレ、ゲルタのお店にいるんだけどさ・・・」
正確には「ゲルタのお店」ではなくて、
「ゲルタが勤めていたお店」である。
タケ:「いや、なんかさ、今日ね、
タカと飲もうって事になったから駅まで来たんだけど、
時間が余ったからゲルタのお店に来たんだよ。
ゲルタも誘おうと思って・・・」
「ゲルタも誘おうと思って」
その言葉がちょっと嬉しいオレ。
タケ:「そんでさ、ゲルタのお店に来たんだけど、
ゲルタがいないからさ、
ゲルタ君はいますかーって、お店の女の子に訊いたのね」
「お店の女の子」とは一緒に働いていた女、ヨーであろう。
タケ:「そしたらさ、とっくに辞めましたよーって言われてさ。
オレ、えええ〜っ?ってビックリしてさ」
オレは、オレが店を辞めたことを、
友人たちにはまだ誰にも教えていなかった。
タケ:「いや、ホントにビックリしてさー。
何?なんで辞めちゃったの?」
オレは、オレが店を辞めた経緯を大雑把に話した。
タケ:「わはははは、そうなんだ、モメたんだ。
モメるのとか、ゲルタらしいよね」
うるせぇよ。
タケ:「いや、飲みの誘いに来たら辞めたとか言われて
ホントにビックリしたからさ。
うん、わかった。じゃぁね!!」
ブツッ
ツー ツー ツー
・・・・・・
???
で、結局なんだったんだ?今の電話は。
確か、オレを飲みに誘うとか言っていたと思ったけど・・・
と、思ったら、すぐにまた、タケからの着信。
タケ:「いやいやいやいや、大事な事忘れるところだった!!」
だよね?
タケ:「うん、オレはゲルタを誘いに、
わざわざ店まで来たんだったわー」
だよねー。
タケ:「そうそう。
で、どうする?飲みに行く?」
あー、どうしようかなぁ・・・
タケ:「オレとタケしかいないから、
ゲルタもどうかなーって思ったんだけど・・・
あ、そういえばさ、仕事はどうしてんの?」
え?仕事?
いや、今、面接の結果待ちだよ。
タケ:「あ、そうなんだー。
何?またどこかの店とか?」
いや、店じゃないけど・・・
タケ:「そうなんだー。
いや、オレもさ、転職しようと思っててさ。
オレも会社で岩手県に行ってくれないかとか言われてさ、
でもオレ、家を建てたばっかじゃん。
子供もいるしさ、単身赴任はちょっとなーとか思ってさ」
あー、そうだろうね。
タケ:「だべー?
だからさ、オレ、転職しようとか思ってさ、
ハローワークに通おうかと思っててさー。
ゲルタはハローワーク行ったの?」
うん、まぁ。
タケ:「どう?混んでる?」
いや、思ったより混んでない。
タケ:「そっかー。
じゃぁ、オレも休みの日にでも通おうかな」
あ、そう。
タケ:「お互いにさ、いい仕事見つかるといいよね」
うん、そうだね。
タケ:「そっかー。
うん、わかった。
じゃ、頑張ってね。じゃあね!!」
ブツッ
ツー ツー ツー
・・・・・・
え?
オレを誘う電話じゃなかったのかよ!?
タケから3回目の電話が着たのは、
それから30分くらい後のことであった。
タケ:「いやー、さっきはゴメン!!
あのさ、今、店に入ったんだけどさ、
どうする?来る?」
おお、行ってもいいけど。
タケ:「おお、来い来い。
そしたらさ、2軒目はあそこ行くべー、あそこ」
あそこってどこ?
タケ:「あれー、なんてとこだっけ?
お姉さんがいるとこ」
いや、オレ、お姉さんがいる店とか、あんまり知らないから。
タケ:「嘘つけー」
いや、ホントに。
タケ:「えー?そうなの?
嘘言ってんじゃねぇの〜?」
言ってねぇよ。
タケ:「いや、こないださ、行ったんだよ、その店に。
そしたらカワイイ子がいてさー。
ヤバイね。オレ、惚れてしまったね」
あー、そう。
タケ:「多分、ゲルタも惚れると思うよ」
あー、そう。
あー、そう。
タケ:「あ、惚れるっていえばさ、
ゲルタの店の女の子、カワイイよな」
あ、ヨーのこと?
確かにカワイイな。
タケ:「好きですって伝えておいてよ」
伝えねーよ。
タケ:「伝えろよ〜」
伝えねぇって言ってんだろ!!
タケ:「彼氏いるの?」
いないよ。
でも、すげぇモテモテ。
タケ:「あ、そうなのかー。
なんだー、つまんねーなー」
オメーは子供までいるんだから悔しがるんじゃねぇよ。
タケ:「まぁ、そうなんだけどさ・・・
オレもいろいろあってさ・・・」
あー、そう。
あー、そう。
タケ:「結婚するとさ、いろいろあるんだよ」
あー、そうですか。
あー、そうですか。
タケ:「うん、そうそう・・・
ま、そんな事はいいや。
うん、じゃぁわかった。
じゃ、待ってるから!!」
ブツッ
ツー ツー ツー
・・・・・・
で、結局オレは、どこに行けばいいの?
結局その日、オレが家から出ることはなかった。
コメント
でもなんかなごみますね、そのお友達さんの言動w
はい、結局行きませんでした(笑
そのあとに、もう1人から電話がかかってきたけど、
なんかもう、めんどくさくて。