「蜂の巣が出来た」と親父が言う。
 
 
 
ウチのうしろ側の軒下に、
握りこぶしを一回り大きくした程のサイズの、
蜂の巣が出来てたのだそうだ。
先日オレの部屋に出現したのはスズメバチだったので、
オレは、「スズメバチだったらどうしよう」と焦ったのだが
どうやら違うらしく、父親が言うにはどうやら、
アシナガバチかなんからしい。

少し、ほっとする。

しかし、スズメバチではないとわかって一安心なのだけれど
アシナガバチだってハチである。
刺されりゃ痛い。
そんなヤツらの巣が家にあるだなんて、おっかない。
 
 
 
「巣、取らないとだな」

親父が言う。
 
 
 
「だね」

オレが答える。
 
 
 
「な」

親父はオレを見ながら言う。
 
 
 
「うん」

オレは答える。
 
 
 
「なっ!!」

親父はオレに、力強く言う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アレ?
それってもしかして・・・オレに「蜂の巣を取れ」って言ってる?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「だってオレ、ハチが苦手なんだよ!!」

親父が言う。

そうだ、親父はハチが苦手なのだ。
ハチの類は全てダメ。
小さなミツバチだってダメ。
どんなハチでもビビッてしまう。
なんとも情けない感じなのだが、
その原因は、親父の幼少期にあるようだった。
トラウマ。
親父はハチに、トラウマがある。
 
 
 
 
 
 
 
 
親父がまだ小さかった頃、
青森の実家の裏はすぐ山になっていて、
親父は、いくつか年上の兄とその山に遊びに行ったのだそうだ。

そしてそこで、大きな蜂の巣を発見。

はじめは兄弟でその蜂の巣を遠巻きに見ていたのだけれど、
途中、兄は何かを思ったらしく、蜂の巣の近くに弟を立たせると、
 
 
 
「エイッ!!」
 
 
 
蜂の巣に向けて、木の棒を投げつけた。
 
 
 
一斉に巣から飛び立つハチの大群。
当然、蜂の巣の近くにいた親父がハチの標的となり、
親父曰く、

「一瞬で目の前が真っ黒になる程の」

ハチの大群に襲われた。

逃げても逃げても追いかけてくるハチの大群。
傍にいるはずの兄に助けを求めるも
兄は一足先に逃げてしまって姿が無く、
親父が泣きながら家に辿り付いた時、
親父は全身をハチに刺されて意識朦朧となったのだそうだ。

そして、病院に運ばれた。
  
それ以来、親父はハチが怖くて仕方がないのだそうだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
そんな話を知っているから、
オレは、「オレが蜂の巣を取らなければ」と思う。

しかし、どうやって蜂の巣を取ったものかと悩む。
殺虫剤だって、すぐには効果がないだろう。
 
 
 
「ペンキのスプレーがいいんだけどな」

親父が言う。
 
 
 
ペンキのスプレー。
スプレーのペンキ。

確かに、その話はオレも知っている。

親父のお兄さん、
先ほどの悪戯な兄ではなくて、6人兄弟の親父の、長男の話。

青森の親父の実家のすぐ隣は、地域の集会所になっていて、
その集会所の軒下に、大きな蜂の巣が出来た時のことだ。
その蜂の巣、それはそれは大きな蜂の巣だったらしく、
近所の人は、その蜂の巣を除去しようと
殺虫剤のスプレーを持って、集会所に集合した。

しかし、親父の兄が持っていったのは赤いペンキのスプレー。

家にあるはずの殺虫剤がどうしても見つからなくて、
兄は、苦し紛れに赤いペンキのスプレーを持っていったのだそうだ。
そして、近所の人が撒く殺虫剤に紛れて、
蜂の巣目掛けて赤いペンキを発射。

すると蜂は、赤いペンキをくらって、
ボトボトと面白いように落ちたのだそうだ。

しまいにゃ蜂の巣を真っ赤にして、
ハチを完璧に封じ込めたのだそうだ。
 
 
 
しかし、この作戦は使えない。
なんせ、ペンキだ。
家をカラフルにしてしまうワケにはいかない。
実際、集会所にペンキを撒いた後も、
その後処理が大変だったらしいし。
 
 
 
 
 
 
 
 
いろいろ考えてると、母親が、

「まず、身体を守ることを考えないとね」

そう言った。

確かにそうだ。
蜂の巣を除去することばかりを考えないで、
ハチの攻撃から身を守ることも考えなければならない。

母親は、

「完全防備完全防備」

そう言うと、
オレに、持ってきたモノを手渡した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
工事現場の黄色いヘルメット。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「これ被って頑張って!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・隙だらけじゃないか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

コメント

チエゾー
2006年9月9日9:39

 黄色のヘルメットなんてかぶったら
 余計よってきそうですね。笑

春紫苑
春紫苑
2006年9月9日10:14

やはりお母様は凄い人ですね。

双希
双希
2006年9月9日10:53

 家に蜂の巣というのもなんとも…
 そう言えば以前「蜂は黒いものに寄るから白い服や帽子をかぶると良い」と聞いたことがあります。
 ……黄色のヘルメットはきっと役に立ってくれますよ(笑)

マルクル
マルクル
2006年9月9日11:40

どうせならミツバチがよかったですね!
気づいた頃には天井からはちみつがぁ!?みたいな(笑)
あ、ゲル兄さんが駆除するなら格好はアレですか?
裸にヘルメット(笑)

そーゆーのはやっぱりその道のプロに頼むのが1番ですよ。
なんちゃらショックとかって危ないし。

nophoto
真夜中のナイチンゲール
2006年9月9日13:46

以前住んでた、家の軒先に、大きなスズメ蜂の巣が、怖々,いたんですが,ある日、洗濯物に・・・

一瞬、激痛が。。小指が・・・急いで病院にいきました。
それから、たしか専門のとこで取ってもらったと思います。
あと、昔、トイレのスリッパの中に・・チック。。って
鋲でも、入ってたのかと思ったら、中から死んだ蜂が・・
足の親指が。。

なんで・・わたしばっかり。。ひどいよ〜(泣) 
 

堂木霞二
堂木霞二
2006年9月9日14:14

スズメバチの巣は家にもできてたことがあります…
こちらでも専門の業者さんに壊してもらったそうですが。

本筋ではないですけど、隙のある父親ってすごくうらやましいです。

はるひ
はるひ
2006年9月9日20:59

うちのママはかつて、スズメバチの巣を、ゴルフのクラブでぶっ飛ばしたことがあります…。
オススメはしませんけど!←当たり前

あと、普通の蜂の巣も自分で駆除した、自称スペシャリスト。
ママが言うには「早朝にやるべし!」だそうです。
今はガンタイプの蜂用殺虫剤もあるので、それがいいみたいですよ。
一度蜂の巣が出来たとこって、また出来る可能性が高いので、
毎年その場所は、要チェックや!なのです。

くれぐれも気をつけて…。

Fruits
2006年9月10日9:20

本文じゃなく「裸に黄色のヘルメット」の文字をみて
うっかり想像してしまい大笑いしています
そしたら、昨日からつっている足がさらにこむらがえりを起こしてしまい、蜂にさされたかと思うような激痛にさっき襲われました

BLOGは真面目に読みなさい
という天罰でしょうか・・・・・・?

ゲルタ
ゲルタ改
2006年9月11日0:22

●チエゾー様。

なんか、そうですよね(笑
ハチのヤツら、危険を表す黄色に挑んできそうですよね(笑
 
 
 
●春紫苑様。

なんか母親、どこかボケてるんですよねー(笑
 
 
 
●双希様。

そそ、そうなんですよねー。
ハチ、黒いのに寄ってくるんですよね。
とりあえず、頭はヘルメットで完全武装しときますわー(笑
 
 
 
●マルクル様。

いやいやいや!!
ちゃんと服を着て、ヘルメット被ります。
てか、もう、肌が見える少しの隙間お完全に無くして
挑みますよー。
あ〜、プロ!!
やってる姿をちょっと見てみたいです。
 
 
 
●真夜中のナイチンゲール様。

マジですか!!
スズメバチに刺されたんですか!!
や、ご無事でなによりですー。
ほんとアレ、ヤバイらしいですもんねー。

オレも洗濯物に入ってたハチにヤラレたことあります。
パンツに入ってて、朝、オシリを刺されたんですよ(笑
で、会社に遅刻しまして、
遅刻理由に「オシリをハチに刺されたから」って素直に書いたら
怒られました(笑
 
 
 
●堂木霞二様。

おおお、堂木霞二様のお家にもスズメバチの巣が!!
恐いですよねー。
やっぱり、業者に頼むのがいちばんですわー。

ウチの親、2人とも隙がありすぎです(笑
結構面白いんですけどねー。
 
 
 
●はるひ様。

あはははははは!!
ゴルフクラブでぶっとばす!!
そんな、チャレンジャーな!!(笑

そそ、ハチの巣駆除は、早朝がいいらしいですねー。
オレ、早起きできなくて、なかなか駆除できずにいます。
あ、ガンタイプの殺虫剤買ってきましたよ!!
なんかもう、バズーカみたいの(笑
 
 
 
●Fruits様。

わははは。
さすがに今回は、服を着ます(笑
でも、裸にヘルメットって、
想像するとなんだか面白いですよね。
守ってるのか守ってないのかわからないですよね(笑

さくら
さくら
2006年9月11日21:22

白いペンキスプレーならOK?(←違)

では無くて・・・ここは懸命に専門の業者さんに頼んでは?(笑)

ハチには刺されたことがないので、ホントは人とか
刺さないんじゃないか?なんて勝手に思い込んでる私です。

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