工業高校出身。

　
　
　
アナタは、通りすがりの人間に
いきなり点数をつけられたことがあるだろうか。

おそらく見た目の話なのであろう。
すれ違う人間（おおよその場合が異性の集団）がパッと見で
勝手にすれ違う自分に点数をつけ、その点数を声を出して言い、
そして仲間うちであーでもないこーでもないと楽しそうに話すのだ。

他人の容姿に勝手に点数をつけるなど
まったくもって失礼なこと極まりない話なのであるが、
あなたはそんなことをされた経験はあるだろうか。
　
　
　
オレは、ある。
一昨日の夜。
場所は深夜のコンビニ。
　
　
　
その時オレはコンビニでジュースとあんまんを買って、
駐車場に停めてある友人マサの車へと向かった。
と、その時にオレは駐車場の敷地にベターッとだらしなく腰を下ろした
20歳になってるんだかなってないんだか判らない、
顔も服装も派手な7〜8人の女の子たちの前を通ったのだが、
そしたら、その女の子たちがオレの方を見ながら口々に言うのだ。
　
　
　
「1」
「1」
「1」
「アタシも1」
　
　
　
一瞬オレは、自分が話し掛けられたと思い
その女の子達の方を振り返ったのだが、すると、
「何見てんですかー、キモイんだけど」と言われてしまった。

オレは、なんだか意味が判らなくて
「ゴメン」と謝ってその場を通り過ぎ、
マサの待つ車に乗り込んだのだが、車に乗ると、オレは、
運転席でオレの買ったあんまんに喰らいついたマサに、
「今、女の子たちみんなに1とか言われたんだけど」と訊いてみた。
するとマサは、言った。
　
　
　
マサ：「通りすがりの人に点数つけて遊んでんだよ」
　
　
　
な、何っ！！
そ、そんな話！！
失礼じゃないか。
通りすがりの人に点数をつけるなんて、
あまりにも失礼すぎるじゃないか！！

しかもオレ、大方が「1」だったぞ？
　
そりゃぁオレだって容姿に自信のある人間じゃぁないが、
「1」はあんまりじゃないか！？
オレだって、見た目が悪いなりにそれなりに努力してんだ。
ソレなのに「1」って低評価は！！
あまりにも！！

つーかコレ、何点満点よ？
何点満点の「1」だよ！？
　
　
　
マサ：「そこが気になるかい」
　
　
　
気になるねー！！
あー、気になるね！！
だってさ、「10点満点」の「1」と「5点満点」の「1」じゃ、
その「1点」の重みが全然違ってくるからな！！
　
　
　　
マサ：「そりゃぁ10点満点の“1”と
　　　　5点満点の“1”じゃ重みは変ってくるけど。
　　　　ベツにいいじゃん、どっちにしろ“1”なんだから」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
ガーン。
　
キミ、結構ヒドイ事言うね・・・
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
ショックだった。
あまりにもショックだった。
ベツにオレは、自分をカッコイイとは思ってはいない。
でも、だから、それならばソレなりに努力はしているつもりだ。
オレだって、そろそろいい歳。
だから余計にその努力は怠らないつもりでいるのだ。
ソレなのに、その結果が「1」。
オレは、少し落ち込んだ。

と、そんなオレを見かねたように、マサが言う。
　
　
　
マサ：「あ、でも、オレ思ったんだけどさ。
　　　　確か、高校ん時にちょっとだけ習ったろ。
　　　　“1”が“オン”で“0”が“オフ”ってさ」
　
　
　
知らん。
そんなの習ったか？
　
　
　
マサ：「習った習った。
　　　　確か、コンピューター言語とかいうヤツだな。
　　　　2進法だっけ？
　　　　“1”が“オン”で“0”が“オフ”なの。
　　　　確か、デジタルの世界はその組み合わせで
　　　　いろんな数字とか文字を表現してるって」
　
　
　
あ〜、そういえばそんなのもあった気がする。
で、それがどうした？
　
　
　
マサ：「だからさ、
　　　　あの女たちはもしかして、ソレで表現してたんじゃないか？
　　　　“1”が“オン”で“0”が“オフ”」
　
　
　
って言うことは？
　
　
　
マサ：「“オン”である“1”を“アリ”、
　　　　“オフ”である“0”を“ナシ”と考えた場合・・・」
　
　
　
その場合、「1」って言われたオレは・・・
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
マサ：「“アリ”だぞ」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
おおおお！！
そうか！！
オレは“アリ”か！！
かなり強引で無理がありまくりの解釈だったけど、
オレは、あの女の子たちにとって“アリ”だったか！！

な〜んだ、そうだったかー。
オレは“アリ”だったかー（←チョーポジティブ）
　
　
　
ソレはまさしく、
オレたちが工業高校で勉強したことが、
社会に出て、初めて役に立った瞬間だった。
たいして入りたくもなかった学校に入って、
そしてソコで学んだことが初めて、役に立った瞬間だった。
　
　
　
と、そんなオレにマサが、
相変わらず駐車場の地べたに座り込んでる女を指して、訊く。
　
　
　　
マサ：「で、オメーから見てあの女の集団は、
　　　　“アリ”なの？“ナシ”なの？」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
んなもん、“アリ”なワケねぇじゃん。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
イヤだぜ、あんな女たち。
地べたに直で腰を下ろしてるヤツなんてきっと、
ケツにブツブツができてるに決まってる。

ふん。
オレは、ケツが汚ぇヤツは嫌いなのさ。