その日までオレは、
スーツにネクタイで働くという事を正直、毛嫌いしていた。
「スーツにネクタイで働くだなんて、そんなもん、ロックじゃねぇ」
そう思っていたからだ。
しかし。
しかしある日、オレは気付いた。
(ロックというのは音楽のジャンルを指す言葉でも、
ましてやファッションを指す言葉でもねぇ。
ロックとは、魂が向かう方向を言うのではないか?
ロックとは、魂の存在する場所を言うのではないのか?
だとしたら、スーツにネクタイという戦闘服に身を包み、
朝から晩まで愛する何かの為に働く、
朝から晩まで愛する何かの為に戦う姿こそ、
逆にロックと言えるのではないのか?
いや、サイコーにロックなのではないのか?)
「・・・スーツにネクタイって、チョーカッケーッ!!」
ソレは、オレがそれまで働いていたオモチャ屋を辞めて
しばらくした日のことだから、去年の話である。
その日の夜、オレは早速、
「オレ、次はスーツにネクタイでロックに働きたいたいんだ」
そう前置きをしたうえで、友人に、相談した。
「スーツって、どこで買えばいいと思う?」
なんせオレ、礼服以外にスーツらしきモノを持っていない。
「青山とコナカだったらさ、青山の方が若干ロックじゃないか?
コナカは松岡修造だけど、青山のCMには
マイケル・オーウェンが出てたからな。
オーウェンをCMに起用するってことにちょっと、
ロックの魂を感じるワケよ。やっぱ青山かな?」
すると友人は、熱く語るオレにシラケタ口調で、
「コムサでいいんじゃない?」と言う。
オレは次の日、早速店に向かった。
店に着くとオレは、困ってしまった。
なんせオレ、スーツという存在と殆ど係わり合いを持たずに
今までの33年間を生きてきたので、
一口に「スーツを買う」っつっても、何を買っていいのか判らない。
しかし、ただなんとなく、
「どんなモノが欲しいか」というイメージだけは持っていて、
ソレは細身のスーツ、というか、ピッチピチのスーツ、であった。
もちろん、パンツの裾はつんつるてんである。
オレ、ピッチピチのつんつるてんが欲しかったのだ。
イメージ的には、ミッシェルガンエレファント、である。
ああいうつんつるてんこそ、
オレにはロックな感じに思えたのだ。
沢山のスーツを前に悩んでいると、
「どのようなモノをお探しですか?」と店員さんが寄ってきた。
オレは、「ピッチピチのスーツが欲しいんです」と言い、
店員さんに、いろんなスーツを出してもらっては試着した。
店員さんが出してくれるスーツに対して、
「もっと細身の」「もっとピッチピチの」と要求してるウチに、
最終的にオレは、その店で売っている細身のラインが特徴の
「イタリアンシルエット」というタイプのSSサイズ、
しかも、「エクストリーム(究極の)」という名が冠された
究極のピッチピチのスーツを買う事になった。
もちろんパンツの裾はつんつるてん。
「暗闇で背びれシビレたいなら、
稲妻を呼んできてほしいと言えっ!!」(←『バードメン』)
ピッチピチつんつるてんスーツに気分はもう、
ミッシェルガンエレファントであった。
しかし、スーツを手に入れたところで、オレには仕事が無かった。
いや、当時古着屋でバイトなんかをしていたのだけれど、
それではスーツを着る機会などあるはずもなく。
オレは、完全に見切り発車の状態であった。
だからオレは、ハローワークに通った。
かといって、オレにやりたい仕事などは無く、
スーツを着て仕事がしたいだけのオレは、
とりあえず、「スーツを着てするであろう職種」の会社の面接を、
片っ端から受けまくった。
某保険会社。
某証券会社。
更にはナントカという怪しげな会社の面接も受けたりしたのだが、
どれもみな、不採用であった。
当たり前である。
仕事に熱意なんて無いのだ。
ただ、スーツが着たいだけだったのだから。
せっかくのスーツを手に入れたのに仕事が無いオレは、
意味も無く街中にスーツで出かけた。
意味無く駅の運行時刻を眺めては多忙なビジネスマンを装ってみたり。
意味無く携帯で話しながら(フリだけ)街中を歩いてみたり。
ビジネスマンといえばやはり「公園でランチだろう」という事で
公園で1人、サンドイッチを食ってみたり(←これは悲しかった)。
そんな虚しい日々をただただ送っていた。
が、しかし、そろそろ冬が始まるだろうかというころ、
オレは、とある仕事につくことができた。
もちろん、スーツ着用の仕事である。
仕事について先月から1ヶ月の間だけ、
忙しい部署の手伝い(ジャンバー着用)に
まわされたりもしたのだけれど、その期間が過ぎると
オレはまた、スーツ着用の仕事に戻された。
それが即ち今日だったので、
オレは今日、ピッチピチのつんつるてんスーツで出勤、
「ロックに仕事するぜ!!イェアッ!!」
そう意気込んで、仕事をしたのだが。
なんせ、ピッチピチのつんつるてん、である。
動きにくいったらありゃしない。
もはや、初期ガンプラのゲルググのように身体の自由がきかないのだ。
しまいにゃ。
ビリッ
ぬぁぁぁ!?どこか破れた!???(←正解は、腋の下)
・・・・・・
「何アンタ、スーツ破ったの?」
「いや、破ったんじゃなくて、破れたんだけど・・・」
「どれ、早く脱ぎな!!縫ってやっから!!」
母親にスーツを縫ってもらってるオレ。
ロックの道は険しい。
コメント
でもあれじゃ動きづらいことこの上ないですよ(´Д`lll)
次回は動きやすさも考慮したうえでご購入を(笑
「ゲルタ改」さんの守備範囲からは、外れるかもしれないんですが...腐女子の「萌え」パターンの一つに「眼鏡とスーツ」ってのがあったと思うんですが(笑)
ちょっと癖はあるかも知れませんが(^_^;)
普段着にされると、結構、女子方面にも受けるのではないかと♪
とか言って頑張ってみてください。笑
ミッシェル、つんつるてんですよねー。
でも、ソレがまたカッコイイんですよね!!
しかし、オレが着ると・・・みたいな(笑
今度の休みに、スーツ買ってきます。
ちょっとゆとりを持たせたのを(笑
●kaj様。
おおおお、アドバイスありがとうございます!!
やー、もう、守備範囲などにこだわってる場合じゃないので、
1人でレフト、センター、ライトをカバーする意気込みです。
もう、普段からスーツ+メガネで出て歩きます!!
へへへへへ。
●JUN様。
涼しげなロックってのもイカシますよねー。
なんかクールな感じで。
ムズイですねー。