オレは昔からお経が好きだった。般若心経。
「かんじーざいぼーさーつ
 ぎょーじんはんにゃーはーらーみーたーじー」ってヤツ。

いや、「般若心経が好き」と言ってもオレはベツに
信心深いとかそういうワケでもなく。
ただ単に、般若心経を「なんか、カッケーよね」とか、
そんなレベルでしか捉えていないワケで。

だから、オレにとって般若心経は
好きな音楽を聴くのと同じような感覚。
たとえばガンズのアクセルが
「シャナナナナナナナ、ニースニース!!」と叫ぶのを聴いて
「おおお、カッケー!!」と思うのと同じように、坊さんが
「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー」と唱えるのを聴いて

「おおおお、
 “ぎゃーてーぎゃーてー”キタッ!!
 意味はわかんないけどとにかくカッケーッ!!」

“信心深くないお経好き”のレベルなんて、そんなもんである。
 
 
 
 
 
 
 
 
そんなオレが入院中、“写経”を始めることにした。

写経ってのはアレ。
般若心経を写し書くアレのことである。
 
や、さっきも言ったとおり「信心」なんてものは殆ど無いのだが、
般若心経にあるその精神性というか、
そういうモノに興味があったオレは、写経を始めることにした。

般若心経は、「生」とは「空」であると説く。
「空」、すなわち何もないこと。

オレの人生、今までバカとエロばかりであったので、
ここらでひとつ、バカもエロも全ての煩悩も捨てて
「空」の境地で生きていくのも悪くない、そう思ったからである。
そしてその入り口にオレが選んだのが、写経なのである。
 
 
 
 
 
 
 
 
で、入院中、実際にやってみたのだが。

まず、墨を磨る作業に疲れてしまった。

いや、今の御時世、初めから墨汁や筆ペンなどとという
便利なモノが売っていて
墨などはシコシコ磨らなくともいいワケなのだけれど、
やはりそこはオレ。意外と凝り性。

「“写経”という行為は精神の修業なのだから、
 墨汁や筆ペンに頼ることなどはけしからん!!」

そんなことを考えてうっかり墨を作ることから始めてしまい、
それだけで精神がボロボロに疲れ果ててしまった。
で、やっと墨が磨りあがったところに、
あのワケわかんねー漢字がいっぱいである。
数えてみたら、ワケわかんねー漢字が270文字くらいある。
墨を磨った腕は疲れてプルプル震えてるし字は細けぇし、
オレのイライラは頂点に達した。
 
 
 
 
 
 
 
 
「何が写経だふざけんなバカッ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
いや。
これだからダメなのだ、と。
オレのこういう性格がダメなのだ、と。
オレは自覚している。
そして、そんなオレの性格に必要なのは心を落ち着ける行為、
全てを捨て「空」になる行為、
すなわちソレが“写経”なのだと。
オレは理解している。
 
 
 
 
 
 
 
 
だからオレは、プルプルする腕に鞭うって写経を続けたのだが、
すると、写経をしているオレの姿を見かけた若い看護婦さんが、
オレに話し掛けてきた。
 
 
 
「何してるんですか〜?」
 
 
 
オレが心を落ち着かせて「写経です」と答えると、
若い看護婦さんは、「何のために?」と更に訊いてきた。
だからオレは、写経と、写経をすることの意味、
そして、般若心経とは何かということを
懇々とその若い看護婦さんに聞かせてやった。
懇々と。
そして、屑々と。

人生とは「空」であるのだ、と。
 
 
 
 
 
 
 
  
すると、今までソレを熱心な感じで聞いていた若い看護婦は急に、
オレに対して、言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ジジ臭いね」
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
誰がジジイだコラァッ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オレはそっと、筆を置いた。
 
と、同時に、そしてごく自然に、
看護婦に対するセクハラをあれこれ考え始める。
オレ、もはや煩悩の塊。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ちっ。
 あの看護婦、ぜってぇチンコって言わせてやるぜっ!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オレが「空」になる日は遠い。
 
 

 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 

コメント

kaj
kaj
2007年2月7日10:42

あはは
...あれは真ん中の方でセットになっている後ろの方「空即是色」を地で行っても良いんですよ♪
だから
看護婦さんにゴニョゴニョと言うのも教えに則っています。
でもって、モノが精神修行だけに形は、何でも在りなんです(あ、これは宗教で扱う場合は、またちょっとニュアンスが違いますが)覚えて唱えるも善し、鼻歌混じりに歌うもの善し、鉛筆でもボールペンでも和紙でもトイレットペーパーでも全然OK)ちなみに、魔よけ厄除けに海外でも通じますから、覚えておいて損はないですよ〜

コナン
コナン
2007年2月7日21:41

おかえりなさいまし。
ぼくも去年の夏、88箇所一部巡りのためにやりました。
せっかくめぐるんだから納経も、と気軽にやり始めましたが
ナンセ殆ど字を書かない生活、最初は腕も痛いし大変でした。
でも、終わってみると楽しかったです。
墨をするのは精神統一のため、と書道の先生も言ってました。
凝り性というならば、ぜひ墨を作るところから始めてください。

ポピー
ポピー
2007年2月7日21:57

ゲルタ節復活でうれしい限りです。元気になってよかったですね!
般若心経は四国八十八ヶ所を回った時、お遍路さんたちが熱心に唱えてました。私も次に回る時には唱えて回りたいと思います。(個人的な願いごとばかり唱えていたから)
「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー」って、あれは何語なのでしょう?ホント不思議な言葉・・でも写経して空になろうと思うくらい、大変な病気してたんですね。

ゲルタ
ゲルタ改
2007年2月8日9:33

●kaj様。

おおおお、さすがkaj様!!
お教えくださってありがとうございます!!
そうなんですか〜、魔除けに海外でも通じるんですか〜。
般若心経、すげぇ・・・
退院してからオレ、また写経始めました。
もう、ハナクソほじりながらとかですけど(笑
 
 
 
●コナン様。

ありがとうございます!!
ただいまです〜。

おおお、八十八8箇所一部巡り!!
いいですね〜、オレもお遍路したいです。
しかしホント、
最近ではあんまり字を書かないからツライですよね。
墨と筆だなんて、小学校を卒業したら
あんまり関わらないですもんね〜。
 
 
 
●ポピー様。

ありがとうございます!!
なんとか元気になりました!!

おお、ポピー様は八十八箇所巡りされたのですね!!
スゲェ!!
オレもいつかやってみたいです〜。
オレ、入院中にいろいろと般若心経について
勉強してたのですが、般若心経、
アレは「梵語」とかいうヤツらしいですよ。
その「梵語」が何かわからないんですけど・・・(笑
「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてー」ってのは、
「往ける者よ、悟りの境地に往ける者よ」とか
そんな感じだったと思います、確か。

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