ショックだ。
ショックがでけぇ。

車を運転するようになってかれこれ15年、
免許だってゴールドカード。
少し前まではプロのドライバーとして
1日中車に乗る仕事をしてたオレなのだけれど。
 
 
 
 
昨日、初めて、事故ってしまった。
 
 
 
 
ソレも、地味〜な事故。
F1レースのように大クラッシュ!!とか
西部警察のように爆発炎上!!とか、そんなんはまるで無し。
 
縁石乗り上げ。
 
だから、ケガも無い。
 
 
 
 
原因は、早い話がオレのわき見運転である。
わき見をしていたから注意力が散漫になり、縁石に突っ込んだ。
マヌケにも、ただソレだけのこと。

悪いのは、オレ。
痛い思いをするのも、オレ。

わき見運転をしたオレが悪いのだから、
この怒りや悔しさ、ぶつける相手もいない。
 
 
 
 
 
 
 
 
では、ナゼにオレが「わき見運転をしていたか」、
わき見運転をしていたオレは、
「いったい何を見ていたのか」という話なのだが、
ソレは、ジイさんである。
 
 
 
 
そう、ジイさん。
 
 
 
 
オレが縁石に突っ込んだ現場のすぐ横の歩道に、
ジイさんがいたのだ。

いや、「いたのだ」と言うよりも
「昨日もいたのだ」と言ったほうが正しいか。

そのジイさんのことは、
その道を通るたびに以前からちょくちょく見かけていた。
ジイさんはいつもそこにいて、
なんか知らんがいつも、あまり大きくないプラカードを持ち、
そのプラカードを車道側に向けてじぃーっと立っている。

「この人は、何をしている人なんだろう?」

前から気になっていた。
 
ボランティアなのかなんなのか、
自主的にやってるのかそうでないのか、
プラカードを持ち、世間に何かを訴えている。

しかし、そのジイさんの持つプラカード、
残念なことにすっごい汚くて、何が書かれてるのかがわからない。
何かをアピールするプラカードなのだろうけど、
すっごいグチャグチャに何かが書かれていて、もはや解読不可能。

「え?何かの暗号?」
「宇宙人へのメッセージ?」

そのくらいのレベルである。
プラカードなのに、何が書いてあるのかが解読できんのだ。

「プラカードの意味無ぇじゃん!!」

そんなレベルなのだ。
 
 
 
 
オレは、そのジイさんを見かけるたびに、
そのプラカードの内容が気になって気になって仕方なかった。

車を走らせながら
そのプラカードの解読に何度もチャレンジしたのだけれど、
しかし、あまりにも汚くてまったく解読できなかった。

だから昨日も、いつものようにまた車を走らせながら、
そしていつもよりも気合を入れて、
プラカードの解読にチャレンジしたのだ。
 
 
 
 
「ヘイ、ユー!!
 今日こそは絶対に読んでやるぜっ!!」
 
 
 
  
本来なら「車を走らせること」に集中させなければならないであろう
全神経をジイさんの解読不能なプラカードに集中させ、
オレは、そのプラカードの解読にチャレンジしたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そしてオレは、理解した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
文字が、読めた。
何が書いてあるのかが、わかった。

以前から何が書いてあったのかわからなかったプラカードの内容が、
昨日、初めてわかったのだ。
 
今までわからなかった数学の問題が、初めてわかった感覚。
最後まで残っていたクロスワードの空欄を埋めることができた感覚。

頭の中にもやもやと広がっていた灰色の雲の隙間から
真っ白な光の筋が射す。
ソレは徐々に広がってオレの頭の中を照らし、そして、
小さな小さな、でも、とても固い氷の塊を一瞬にして、溶かした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ああ、そういうことが書いてあったのか・・・」
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
と、思ったらドーン!!

何が書いてあるかわかった瞬間オレ、縁石にドーン!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
地球が爆発したんじゃないか?とも思えるようなものすごい音と共に、
ものすごい衝撃が身体を駆け巡る。
「ブォォォォ」とエンジンは唸り、
コンクリートの塊は、「ズガガガガ」と車体を削る。
 
 
 
 
 
 
 
 
オレが運転する車は縁石に突っ込み、
そしてさらに、ソレに乗り上げてしまったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
オレが縁石に乗り上げて立ち往生していると、
さっきまですぐそこにプラカードを持って立っていたジイさんが、

「あららららら〜」

そう言って近づいてきた。

「オメーさん、ダイジョブかい?」
 
オレは、縁石に突っ込んだことでかなりパニックになっており、
全くもってダイジョブじゃなかったのだけれど、
「うん、ダイジョブ」と答える。
 
 
 
 
「まったくなぁ、オレがせっかくこうして
 みんなに呼びかけてる所に突っ込んでくるんだからなぁ」
 
そう言うとジイさんは、苦笑いをした。
 
 
 
 
「アンタだよ!!
 アンタのそのプラカードが気になってよそ見をしたから、
 オレは今、ここにこうしているんだよ!!」
 
ジイさんの苦笑いを見てオレの中には 
そんな言葉たちが渦巻いたのだけれど、
オレはすぐさま、そんな言葉たちを飲み込む。
 
 
 
 
するとジイさんは、エイヤッと
その読みにくいプラカードを肩に担ぎ、
オレに向かって、笑顔で言った。
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「でも、身体はダイジョブそうだなぁ、よかったよかった」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
オレは、ジイさんの笑顔から視線をずらし、
オレが縁石に突っ込む原因となった、その、
読みにくいプラカードを改めてまじまじと見つめる。
 
 
 
  
ジイさんが担いだその汚いプラカードには、
これまた日本語とは思えぬような汚い文字で、
何度見直してもやっぱり、こう書かれてあった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『交通事故に注意しましょう』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

コメント

梨香
梨香
2007年4月9日13:56

こんにちわ。
ケガがなくて不幸中の幸いですね。。
ご無事で何よりです。
...が、ミニフリークとしては車が大丈夫なのかも気になります。笑

ゲルタ
ゲルタ改
2007年4月9日22:17

●梨香様。

こんばんはー。
ありがとうございます!!
ケガ、しないでホントよかったです−。
で、でも、車は・・・
今はとりあえず、修理工場に行っちゃってます・・・

JUN
JUN
2007年4月10日13:35

気になるプラカードがあろうとも交通事故には気をつけなきゃいけないってことですよ!笑

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索