ウチの庭にある桜の木にもようやく花が咲いた。
お世辞にも立派とは言えないようなとても貧相な桜の木なのだけれど、
それでも、その細い枝にポツリポツリと花を咲かせる。
この時期、
ウチの桜の木に花が咲く頃になるとまるで季節の風物詩のように毎年、
ウチの両親の間で交わされる会話がある。
2人とも前年に同じようなことを話したのを
すっかり忘れてしまってるのかオレは、その会話を毎年聞いている。
「ウチの桜も咲いてきたねー、5分咲きかな?」
「いや、まだもうちょっと5分咲きには早いな」
「じゃ、3分咲き?」
「いや、3分よりは咲いてる気がするから、4分咲きで」
「4分咲きなんてのはないよ」
「なんで?5の前は4だべ」
「確かに5の前は4だけど、桜の咲き方は3分の次は5分咲きなの」
「それはおかしいだろう。
3分咲きがあって5分咲きがあるなら、
その間には必ず4分咲きの時期があるはずだろう」
「でも、3分咲きの次は5分咲きなの」
「おかしい!!変だ!!」
こんな会話が毎年だ。
しかもその会話は、庭の桜が散るまで毎日のように、続く。
「なんで6分咲きって言わないんだ」
「普通は6分咲きなんて言わないよ」
「7分咲きの次は8分咲きだろう」
「8分咲きってはあんまり聞かないよ」
「9分咲きがあってもいいじゃないか」
「それはもう、満開でいいじゃない」
こんなしょーもない会話が、
桜が咲き始めてから花びらが風に乗って散るまでつづくのだ。
そして、いい加減うんざりしたオレが
「その会話、毎年毎年してるよね。
ってか、昨日もその前の日も同じような事話してたよね」
そう言うと両親、2人揃ってすっとぼけた顔してこう答える。
「そうだっけ?」
オレは、毎年どころか昨日の会話の内容も覚えてない両親に、内心、
「そのうち、
さっき食ったばっかのご飯のことも忘れるんじゃねぇの?」
そんな恐怖心を抱き、そして、少しの苛立ちを覚える。
しかし、そんな両親の会話は、
苛立ちと同時に季節を感じることさえもすっかり忘れるほどに
余裕を無くしてしまっている自分に、
「あ、そういえば春なんだよな」
そんなふうに、季節と、
季節を感じることの喜びを思い出させてくれる
きっかけになってくれていたりする。
それもまた、事実であったりするのだ。
・・・・・・
「3分咲きの次は5分咲き、
5分咲きの次は7分咲き、
で、7分咲きの次は満開。
それは、三回忌の次は七回忌、みたいなもんなのかな」
ソレで納得してもらえるならそれでもいい。
コメント
来年もきっと綺麗ですよ。
日本人は奇数で数えるのが昔から好きだったんでしょうね。
そのごく当然のようなことに真っ向から疑問符を投げかける親父さんは、すごいとこ突きますね〜(^^)
でも、いつも思うけど、ゲルタさんの両親って、ベストカップルだね。
ウチのほうでは、今週末にようやく桜の見頃がやってきます。
ちょっと天気が悪そうでハラハラなんですけど、
満開の桜を見るのは楽しみです。
それにしても、たったの1週間だけでこれほど
日本人の心を動かす桜って木は、すごいですね。
●ポピー様。
あ、ホントですね、なぜか奇数だ!!
どうして奇数で数えたがるんでしょうねー。
親父、たま〜に不思議なこと考えたりしてるんですよ。
他人にとっちゃ別にどーでもいいことを、
真剣に考えたりしてます(笑
や、ベストカップルですか!!
ありがとうございます。
息子のオレが言うのもなんですが、
息子からしても、仲が良くてなかなかお似合いだと思います(笑