ウチの会社ではこの時期、
みなさまにもお馴染みのとある商品を販売しているのだけれど、
オレ、営業職でもないのに、その商品の販売実績が会社内で
上位だったということで(営業じゃなくても売上実績が残る)、
何人かの職員と一緒に表彰されることになった。
 
模範社員ということで、
他の大勢の社員が見つめる中、局長に表彰されるのである。

フッフッフ、さすがオレ。
 
 
 
 
 
 
 
 
で、その表彰。

前にも言った通り、大勢の社員の見つめる中で行われたワケだが、
そんな中オレは、オレと同じ表彰されるヤツらと一緒に、列に並んだ。
 
 
 
「それでは、○○の販売実績上位の者の表彰式を行います!!」
 
 
 
そう言ったのは司会者。
表彰される者の列の前から4番目に並んだオレは、
他のヤツらと一緒に“表彰する側”である局長の前に、
横1列に並んだ。
もちろん、「気をつけ」の姿勢で、みんな横1列。
 
 
 
「○○販売上位表彰の者、△△!!」
 
 
 
名前が読み上げられると、
列の一番右側にいたヤツが1人前に進み、局長の前に立った。
こいつは営業の人間だ。
 
局長は、表彰状を読み上げる。 
 
 
 
「表彰状。△△殿。
 あなたは、平成19年度における平成20年用○○の予約・販売において
 他の社員の模範となる成績を収めましたので、その功を称え、
 ここに表彰いたします」
 
 
 
表彰状を受け取った△△が頭を下げて列に戻ると、
司会者が、次の表彰者の名前を読み上げる。
 
 
 
「○○販売上位表彰の者、××!!」
 
 
 
名前を呼ばれた××が、局長の前に進む。
こいつも営業。
 
 
 
「表彰状。××殿。
 あなたは、平成19年度における平成20年用○○の予約・販売において
 他の社員の模範となる成績を収めましたので、その功を称え、
 ここに表彰いたします」
 
 
 
局長が表彰状を読み上げる。

フツーなら、「以下、同文」とかで済まされそうなものだけれど、
局長は、表彰状の文面をちゃんと読み上げた。
ソレを聞いたオレは、
(ああ、やっぱり人の上の上の上に立つ人間てのは違うもんだな)
そう思った。
1人1人に対してきちんと謝礼の意を伝える、その心配り。
「以下、同文」で済ませてしまえば楽なモノを、
この局長、略さないできちんと全文を読み上げる。
 
と、また、次の者の名前が呼ばれた。
 
 
 
「○○販売上位表彰の者、◇◇!!」
 
 
 
名前を呼ばれた◇◇は局長の前に立ち、
前の2人と同じく表彰状を受け取り、頭を下げ、
そして、列に戻った。

次は、いよいよオレが表彰される番である。
 
 
 
「○○販売上位表彰の者、サイトウゲルタ!!」
 
 
 
オレは「ハイ!!」と力強く返事をし、
薄っぺらい胸をグッと張り、
背筋をピンと伸ばして、ゆっくりと歩を進め、
そして、局長の前に立った。

局長は小柄だけれど、どこかその目に威圧感のようなモノがある人で、
その局長に面と向かったオレは、局長の鋭い眼差しに少し、ビビッた。
 
と、局長は急にその頬をにっこりと弛めると、
大勢の社員が見守る中、オレに向かって語りかけてきた。
 
 
 
「おお、ゲルタくん。
 ゲルタくんは営業でもないのになぁ。
 社内でもトップクラスの販売実績だなんて、素晴らしいことですよ」
 
 
 
オレは普段、自分はどちらかといえば反体制側の人間だと思っていて、
上の人間に何か言われた時、クチでは「あ、はい」なんて言っても、
心の中では「うるせぇぞコノヤロウ!!」とか思っているのだけれど、
オレからしてみりゃ、上の上のそのまた上の存在である局長、
普段であれば会話する機会などほとんど無い局長に
直にそういう言葉をかけられると、やはり嬉しい、と思う。
なにより、上の上の上の存在である人が
下の下の下に位置する存在であるオレの名前を
覚えてくれていたことを、嬉しいと思う。 

局長はオレを見て微笑んだまま、続ける。
 
 
 
「今、会社は新しいスタートを切って一番大事な時だから、
 ゲルタ君が営業でもないのに会社を想って
 こんなに販売をしてくれると、ウチの社は非常に助かります」
 
 
 
そして、局長は、言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ありがとう」
 
 
 
 
 
 
 
 
オレは、素直に嬉しかった。
上の存在に礼を言われることなんて、滅多にあるもんじゃない。
オレは、嬉しかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
と、局長は、急に思い出したように言った。
 
 
 
「おお、表彰状だったね」
 
 
 
局長はそう言って、1つ2つ咳払いをすると、
オレに手渡すであろう表彰状を両手で掲げる。
 
 
 
「表彰状。サイトウゲルタ殿」
 
 
  
局長は、オレの目を真っ直ぐに見据える。

そして、急にいつもの鋭い眼差しに戻ると、
チカラを込めた声で、会場に響くように、言った。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「以下、同文!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 

コメント

マルクル
マルクル
2007年12月5日0:01

以下同文でも特別な以下同文じゃないですかー!
他の人は賞状の文読んで貰ったのにゲル兄さんだけは
上の人からの言葉なんですから^^

おめでとうございます^^

ボブ
ボブ
2007年12月5日3:42

関西人ならそこですかさず
        ∧∧
       ヽ(・ω・)/   ズコー
      \(.\ ノ

ですよw(AAがズレテタラスミマセンw)
美味しい場面をスルーしてしまいましたね。

追伸
表彰おめでとさん。

リンドウ
リンドウ
2007年12月5日10:46

*clap*
おめでとうございます〜
表彰されたことのない私にとっては凄く羨ましいです。

額縁に入れて飾っちゃいますか!?

nophoto
kcat
2007年12月5日13:21

そこで!?って感じですね(笑

でも、すごい局長さんですね。上の人で、ここまで素直に言ってくれる人って、中々いないんじゃないですか?往々にして、上の人には、勘違いが多い気がします。

てか、上と下っていうのも、なんか嫌ですよね。上には上の仕事で、下には下の仕事で、上も下もどちらも必要だから「仕事」であるわけで、そこにはそれ以上も以下もないのに、勘違い野郎がいるわけで。
そんな局長さんと一緒に働いているゲルタさんが羨ましいです。

って自分まだ働いていないんですけど。笑)

てか、ゲルタさんすごいです!!おめでとうございます!!
さすがゲルタさんです!!凄すぎです!!!

ゲルタ
ゲルタ改
2007年12月5日22:25

●マルクル様。

ありがとうございます!!

やー、なんか局長、
オレのことはガッチリ覚えてたみたいなんですよ。
かなり特殊な状況で入社しまして、
初めての挨拶した時、オレ、ジーパンでしたから(笑
 
 
 
●ボブ様。

うわー!!
ズコーと行ける余裕がありませんでしたわー。
まだ、そういうのに素早く反応できないんですよー。
なんてかもう、あのコケるタイミングは
身体に染み付いてるんでしょうねー。
羨ましいですわー。
 
 
 
●リンドウ様。

ありがとうございます!!

やー、
表彰されたことなんて、オレもほとんど記憶にないですよー。
小学校の時の作文コンクールとかでしか。

表彰状、もう、そこらにほっぽってあります(笑
 
 
 
●kcat様。

ウチの会社の局長、関西のほうからいらした方なんですが、
なんてか、アツイ方なんですよー。
それでいて、とても紳士な感じで。
歳をとったらああいう紳士になりたいなーと思うほどです。

確かに、上であることにあぐらをかいてる上のヤツって
いますよね。
そういうの、ムカツキますよねー。
「ああん?オレより早く生まれただけでいばってんじゃねぇ!!」そんな感じですよね。

や、お祝いくださってありがとうございます!!
 

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