横浜の帰り、秋葉原による。
 
 
 
 
 
秋葉原。

いったい何なのだ、この街は。
街にメイドさんがいても誰も気にしない。
それどころか、
ボウズ頭の男がメイドのカッコしてても誰も気にしない。

「なんで!?男がスカート履いてんじゃん!!」

オレは、心が騒いでたまらなかった。
さっきまで横浜の港の見える丘公園にいただけに、余計に。
港の見える丘公園にあった空気を色に例えるならば、透明。
でも、ここ、秋葉原に溜まった空気を例えるならば、灰色。
なんというか、大気中における二酸化炭素の占める割合が
異様に大きく感じる。
特に、緑豊かな田舎、うつくしまに育ったオレとしては、
ボーン・イン・ザ・FUKUSIMAなオレとしては
この街の空気を息苦しく感じる。
 
「秋葉原の街が無くなれば、
 環境問題も一気に解決に向かうんじゃないか?」

そんなことを思う。
 
 
 
 
 
正直、秋葉原という街には良い印象を持っていなかった。
いや、秋葉原の街というか、そこを土壌として育った文化に、
あまり良い印象を持ってなかった。
秋葉原が「アキバ」と呼ばれ、そこから世界に向けて
「ヲタク」という文化が発信されていることに、
嫌悪感さえ抱いていた。
「これは、日本の恥ではないのか?」と。

そもそも「ヲタク」というのはオレがまだ若かりし頃、
ラジオの深夜放送なんかで、アニメなんかに夢中になってた人が
その仲間を呼ぶ時に相手のことを「おたくは〜」なんて、
そんな風に呼んでいたのを
小バカにしていたことから始まったモノだったと思う。
「ヲタク」という言葉は、最初は相手を卑下する言葉だったワケだ。
そこから世界に向けて発信されるまでに至った「ヲタク文化」のもつ
パワーのようなモノは素晴らしいとは思うが、正直、
その言葉が生まれた瞬間をリアルに体験した人間には、
ソレがどんなに大きくなろうともどこか穿った考え方をしてしまう。

しかも、なんなんだ、この街における男率の高さは。
街を歩いてる人の8割は男じゃないか。

今すれ違った、リュックを片方の肩にかけた太っちょの吐いた息が、
もしかするとオレの肺に流れ込んだかもしれないと思ってオレは、
慌てて呼吸を止める。ソレは桃色吐息ではないから。
街をただ歩いてるだけで、冬だというのに汗をかいてきた。
この街は、なんて環境と健康に悪い街なんだろう。
 
 
 
 
 
途中、どういった流れからかは覚えていないが、
「メイドカフェに行ってみよう」ということになる。
「マジっすか!?」オレは思う。

メイドさん。

その存在が人気があるのは知っていた。
オレの前職はフィギュア屋の店長。
その当時、店ではメイドさんの「制服コレクション」的なフィギュアや
いわゆる美少女フィギュアのようなモノも扱っていて、
オレは、抵抗を感じていた。
オレは、自分が管理する店を映画関係のフィギュアや
デザイナーズフィギュアで埋め尽くしたかったのだけれど、
オーナーのどこで仕入れてきたか解らない情報で、
店には、そういったフィギュアのコーナーが設けられ、
オレは、そのコーナーを作りながら屈辱感を感じたことがある。

「ここは、そういう店にしたくねぇんだよ!!」

そう思いながらもオーナーの意向には逆らうことができず、
顔の役半分が目だったりするロリ顔で、でも、胸が妙にボインボインのスクール水着の女の子やブルマー履いた女の子のフィギュアを
店に並べた記憶がある。

「こんなの買うヤツいんのかよ!?」

でも、そういうフィギュアは売れた。
中でも、メイドさん関係のモノはよく売れた。
実際、映画関係のフィギュアよりそっちのフィギュアのほうが
人気があって、もっさい男たちが予約してまで買っては、
店頭でソレを見て、

「萌え〜」

そんなこと言っていた。
ソレを聞いてオレは、

「ウチの店ん中で萌えって言うな!!」

そう思っていたのだけれどお客にそんなことも言えず、
でも、気持ちが治まらないオレは、
通常「ありがとうございましたー」で済ませる挨拶を、

「あーりがとうございっしたぁっ!!」

若干、威嚇したりした。
 
 
 
 
 
で、街で配っていたチラシを頼りにして、
若干迷いながらもメイドカフェに行く。
店に向かう途中、手のひらが汗でベトつくのを感じた。
そして店の中に入ろうとした時、
それが更に酷くなってることを感じた。

そして、店に入る。
 
 
 
 
 
(準備はいいか?オレ。
 この扉を開ければ完全アウェーだぜ?
 オレのような人間にとっては、完全アウェーだぜ?
 いわば、日韓のサッカーで韓国側のスタンドで
 「♪にぃっぽーん、にぃっぽーん、にぃっぽーん
   オイ、オイオイオイオイッ!!!」
 そう歌っちゃうようなもんだ。
 そのくらいのアウェー感だ。
 でもオレ、決して相手に飲まれるな。
 飲まれたらそこで終わりだぜ?解ってるな、オレ!!)
 
 
 
 
 
そして、いざ、扉を開く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「お帰りなさいませ、ご主人さまぁ〜」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
うわ、危ねぇ!!
「萌え」って言うところだった!!
オレ、危うく「萌え」って言うところだった!!

しっかりして!!
気を確かに!!
気をしっかり持つんだ、オレ!!

オレはゲルタだぜ!!
オレは、腐ってもゲルタだぜ!!
誰が腐ってんじゃコラァッ!!(←かなりの動揺)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ご主人様、お飲み物はいかがいたしますかぁ〜?」
  
狭い店の中には、フリッフリのミニを履いて
太腿を剥き出しにしたメイドさんが5、6人いた。
そのメイドさんたちが、オレたちをいちいち
「ご主人様」「お嬢様」と呼ぶ。

その中に、やたらとアニメのような声を出すMちゃんという子がいた。
なんてか、ものすごくカン高くてふにゃふにゃな声。
「え?キミのお父さん、イルカ?」みたいな。

その子が、オレに向かって言うのだ。
 
 
 
 
  
「ご主人しゃまぁ〜」
 
 
 
 
 
最初はその声にイラッとしていたのだけれど、
ソレを何回も聞いてるうちに、
 
 
 
  
  
「ご主人しゃま〜」
 
 
 
 
 
「ご主人しゃまぁ〜」
 
 
 
 
 
「ご主人しゃまぁ〜〜〜」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんかちょっと、イイかも。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
もしや、これが「萌え」というヤツか!!
これが「萌え」という感覚なのか!!

くぅぅ〜、恐るべし、メイドさん!!

すまん!!
オレは完全に腐りましたっ!!
はい、腐りましたわ!!
腐敗臭出してますわ!!
もう、ぐちゃぐちゃですわー!!

てか、ラヴ!!
Mちゃん大好きです!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、完全に腐ったオレは
追加料金500円を払ってMちゃんとゲームをした。
Mちゃんとゲームをして勝てば、
一緒に写真が撮れるというご褒美があるのだ。
勝負はMちゃんが最も得意だというゲーム。
 
「Mちゃんと勝負して、勝つ!!
 そしてMちゃんと写真を撮る!!」
 
オレは、奇跡的な勝負強さを発揮して、勝つ。

そしてオレは、Mちゃんと一緒に写真を撮ることになった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
「Mと一緒のポーズをしてくださいね、ご主人しゃま」
 
 
うん、ご主人しゃまは、Mちゃんと一緒のポーズしまーす。
 
 
「まず、手を丸めて、にゃんこのお手手みたいに丸めてくださいね」
 
 
はーい、にゃんこしまーす。
 
 
「そしたら、左手を顎のところに置いて、
 右手をおでこの横のところにおいてー」
 
 
左がアゴでー、右がオデコでー。
 
 
「そしたら、Mがせーのって言ったら、
 ご主人しゃまもMと一緒に、
 にゃーんてにゃんこみたいに首を傾けてくださいね」
 
 
はーい。にゃーんてやりまーす。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「じゃ、ご主人しゃま、行きましゅよ〜。はい、せーの」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
にゃ〜〜〜〜ん(←もう、元の世界には戻れなくなった瞬間)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

コメント

kaj
kaj
2007年12月31日12:39

あはは、その第一世代の生き残りです♪

あれをして文化だの経済行為だのって既成事実にしたのは、東京芸大卒の「村上」氏です。
それまでは、恐る恐る遠巻きにするか、そっち系の業界人が楽屋ネタのヴァリエーションとして楽しんでいただけのものだったはずなんですが(^_^;)

マルクル
マルクル
2007年12月31日13:51

メイドカフェ。。。
アレはもはやカフェではない!
私も1回興味本意で行ったんですよー。
カフェを名乗るのに紅茶がまずいんですよねーwww
コレ何時間放置した紅茶?!って感じにぬるいし。
アレは女性が行く所じゃないですね。
ご主人様とお嬢様じゃ明らかにお嬢様のが下だし。

ゲル兄さんが楽しそうで何よりです。
それではよいお年を〜^^

ゲルタ
ゲルタ改
2007年12月31日21:20

●kaj様。

あははははは!!
生き残り!!
kaj様もあの時代に青春をお過ごしになったのですねー。

東京芸大卒の村上氏っていうと、村上隆さんですか?
あの、ヴィトンとコラボとかしてた人ですかねー。
 
 
 
●マルクル様。

あー、確かに!!
カフェってワリには飲物はちゃちいかも(笑
確かにぬるかったですわー。
確かに、女性が行くには
ちょっとツライところがあるかもしれませんねー。
カフェというよりも、メイドさんに興味がある男性が
集まる場所ですよね。

ありがとうございます!!
マルクル様にとって、来年がステキな1年でありますように!!

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索