小さな子に
「赤ちゃんはどうやってできるの?」
そう訊かれて困ってしまったことはないだろうか。
「精子が卵巣に到着すると細胞分裂が始まって〜」
そんなふうにリアルに答えるべきか、
はたまた、「コウノトリが運んでくる」的に曖昧に答えるべきか。
相手が小さな子だけに、悩んでしまうというものである。
まったく、子供というのは無邪気なだけに恐ろしい。
無邪気な笑顔を浮かべてそんなこと訊いてくるのだから恐ろしい。
「天使のような悪魔の笑顔」とはきっと、
こういった笑顔のことを言うのだろう。
ソレは先日、
友人タケの家を訪れた時のことである。
タケの家の玄関のドアを開けるなり、
「ねー、どうしたらできるのー?」
そんな声が聞こえてきた。
声の主はカホちゃん。5歳の女の子。タケ夫婦の子供である。
そのカホちゃんが、タケの奥さんであるカスミちゃんに言うのだ。
カホ:「赤ちゃんてどうしたらできるのー」
カスミちゃんは困っていた。
苦し紛れに
「大きな鳥さんが運んできてくれるんだよ」
そんなことを言う。
しかし、そんな答えではカホちゃんは納得がいかない。
カホ:「嘘だー。
だってママが産んだんでしょー?」
まったくそのとおり。
タケとカスミちゃん夫婦には、
カホちゃんの下にもう一人、幼児がいる。
カホちゃんは、カスミちゃんのお腹が大きくなったことから
カスミちゃんが入院して赤ちゃんが生まれた事も知っているから、
「鳥さんが運んできた」
そんなのは幼子といえどカホちゃんには通用しない。
カスミちゃんは困ってしまった。
すると困ったカスミちゃん、
カス:「パパに訊いておいで。
はい、タケちゃん、パス!!」
するとカホちゃんはてくてくとタケの前にやってくる。
タケ:「え?俺?」
今度困るのは、タケの番。
タケ:「え〜〜〜、ん〜と・・・」
そりゃぁ、タケに答えられるワケがないわな、と思う。
だいたいこのタケという男、
高校の時の成績がクラスの37人中、36番だったのだ。
下に1人しかいなかったのだ。
まぁ、その1人がオレなワケですが。
タケ:「ゲルタ、パース!!」
案の定、タケはオレにパスしてきた。
するとカホちゃんはオレのもとにやってきた。
カホ:「赤ちゃんてどうしたらできるのー?
ゲル兄ちゃん(カホちゃんはオレをこう呼ぶ)、教えてー」
ふっふっふ。
だったら教えてやろう。
「性教育界の夜回り先生」こと、このオレがたっぷりと教えてやろう。
だが、その前に1つ、言っておく事がある。
ソレは、夜回り先生の教育方針についてだ。
夜回り先生の教育のモットーは常に、
「現場第一主義!!」
これにつきる。
さすがに相手が5歳では現場もへったくれも無いが、
それでも、先生が教えるのはいつも真実。
先生の性教育にゴマカシやマヤカシなどは存在しない。
だから全てをリアルに・・・
タケ:「ゲルタ!!
相手は5歳だぞ?よーく考えろよ!!」
・・・・・・確かに。
確かに、相手が5歳では、
いくらなんでも先生の授業は刺激が強すぎるかもしれない。
いや、4歳では刺激を感じる隙さえ無いのかもしれない。
だからオレは、具体的な名前を出さないように、
肉体的なことではなくて気持ち的な部分で
5歳のカホちゃんに教えることにした。
ゲル:「赤ちゃんは、
男の人と女の人がふたりで一緒に
赤ちゃんが欲しいなーってお祈りしたら、できるんだよ」
すると、カホちゃんは言った。
カホ:「カホも赤ちゃん欲しい!!
兄ちゃんも一緒にお祈りして!!」
え?お祈りっすか?
・・・・・・
ゲル:「お嬢さん、
こんなこと言ってますが・・・いいですか?」
タケ:「・・・・・・」
ゲル:「お義父さん」
タケ:「お義父さんって言うな!!」
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