その時オレは、焦っていた。
オレの部屋。
目の前のベッドには職場の女、ナミが泥酔して寝ている。
2人きり。
オレの部屋にオレとナミ、2人きりなのである。
「これ、どうしよう・・・」
いや、その少し前まで、
オレの部屋にはナミの他にも数人の人間がいたのだ。
その日は週末ということもあり、会社の新年会があった。
その中でオレは数人と映画の話をして、オレが
「鉄コン筋クリートというアニメの映画が面白い。
オレはDVDを持っている」
と、そんな話をしたら、会社の新年会が終ったら
オレの部屋でそのDVDを観ようということになり、
夜も遅く、数人の人間がオレの部屋にやってきた。
で、DVDを観始めたワケなのだが、
観始めるなりすでに泥酔状態だったナミは
オレのベッドを占領して寝始め、
そしてしばらくするとみんな、
映画もまだ途中だというのに、眠いから帰ると言い始めた。
その時みんなはいちおう、ベッドの上のナミに
「帰るよ」と言ったのだけれど、泥酔状態のナミ、
「泊まるっ!!」
頑として動こうとしない。
オレは、「無理にでも連れてけ」と言ったのだけれど、
ナミは仙台から新幹線で通勤している身であり、
すでにその新幹線も、最終は出てしまっている。
「じゃ、アレだ!!ネットカフェにでも連れてけ!!」
しかし、
こんな泥酔状態の女子を1人にするのは危ない、
しかも、すこぶる面倒だということで、却下。
ソレにナミは、
すでに気持ちよさそうにオレのベッドを占領しているので、
みんなはオレの部屋に泊めてやれと言う。
「大丈夫だよ。
ゲルさんが間違いを起こさなければいいだけだから」
そして、部屋にはオレとナミが2人きり。
ナミは、あまりにも無防備だった。
「おーい、ナミよー」とか声をかけると、
「んあ?」などと目を瞑ったまま返事をする。
「なんだ、この女!!
この女には危険を回避する能力が欠落してるのか!?」
オレは思う。
いちおうオレも、男である。
それなりに若い男である。
しかも、エロだ。
そのエロの部屋でエロを前に、
泥酔とはいえ無防備な状態で寝るだなんて、なんたることか。
「こりゃぁ、明日の朝は説教だな」
オレはナミの寝顔を見ながらそんなことを考える。
と、ふと、ナミの目に視線がいく。
・・・・・・
「ナミってけっこう、まつげが長いんだな・・・」
そんなことを考えてる自分に気付く。
キュン。
はっ!!しまった!!
おいおいおいおい、オレ!!
何を考えてるんだ、オレ!!
キュンキュンしない!!
相手はナミだぜ?
職場の同僚だぜ?
毎日毎日会ってるじゃないか。
毎日顔を会わせていても、なんとも思わなかったじゃないか。
カワイイか?
この女、カワイイか?
・・・・・・
「でも、こうしてみると結構カワイイ・・・かも」
キュン。
お、お、おい!!
ダメ、ダメだぜ、オレ!!
ここでキュンキュンしちゃったらヤバイぜ!!
自分の部屋!!
ベッドに寝てる女!!
この状況でキュンキュンしちゃったら
ドント・ストップ・ミー・ナウ!!
ほら、ソレに、ナミの寝顔を見てみろ!!
ナミったら、すっかり気持ちよさそうに寝てるじゃないか!!
こんなに気持ちよさそうに寝てるのに・・・
・・・・・・
「あれ?
なんか、息苦しそうな顔してるな・・・」
キュンキュン!!(←ドS魂、点火)
ベッドの前で、意味もなく行ったり来たりと悩むオレ。
オレの中には2人のオレがいて、それぞれがこう囁くのだ。
「ここでなんかしちゃってみろ?
後からなんか厄介なことになっちゃうかもしれないぞ?
ソレに、寝てるところに襲い掛かるだなんて、
人としてイケナイことだろう?」
「でも、人ん家で寝てる方が悪いんじゃねーか?
無防備で寝ちゃってるヤツが悪いんじゃねーか?
これでどうにかなっちゃったって、文句は言えねーだろ」
悩むオレ。
相変わらず行ったり来たり。
で、散々考えた挙句、オレが下した決断。
「おっぱい」
と、その時である。
ナミの目がいきなり開いた。
ナミとオレの視線が合う。
「ゲルさん」
うおおおおおおーっ!!
名前を呼ばれて焦りまくるオレ。
「お、目が覚めた?」
オレが焦りを隠し、平静を装ってそんなことを言うと、
ナミは一言「トイレ」と言った。
「おお、トイレな!!
ダイジョブか?歩けるか?」
オレがそう言うと、ナミはベッドに寝たまま黙ってうんうんと頷く。
しかし、頷くわりにはなかなか立てず、
ナミは、しばらくしてやっとベッドに腰をおろす。
その顔は真っ青で、目に涙が溜まっていた。
「あれ?もしかして、キモチワルイ?」
オレが言うと、ナミは黙って頷いた。
「マジで?吐く?吐きそう?
トイレまで歩けるか?
階段下りれるか?
わかった!!
袋持ってくるからちょっとだけ我慢しろ!!」
「うん・・ごめん・・・うぅっ!!」
「わかった!!
わかったから喋るな!!口開けたら吐く!!」
急いで袋を探すオレ。
あああ、こんな時に限って袋が無い!!
さっきよったコンビニもマイバッグで済ませてしまった!!
何がマイバッグだバカヤロウ!!
すると、ナミ。
「ゲルさん・・・ダイジョブ。
私、歩いてトイレまで行けエレエレエレエレエレエレエレ!!」
ギャァァァァッ!!吐いたぁーっ!!
・・・・・
その後オレは真っ青な顔のナミをベッドに寝かせ、部屋を掃除する。
もはやおっぱいのことなどはどーでもよく。
オレは、
「隣の部屋で寝てるから、なんかあったら呼べ!!」
そう言って、隣にある暖房もなにもない姉の部屋、
今ではオレの衣裳部屋になっている部屋に布団をひいて、寝た。
そして次の朝。
目が覚めてナミのところに行くと、
ナミはすでにベッドにはいなかった。
「あれ?」
そう思って両親のいる下の階に行くと、
「あ、ゲルさん!!
ご馳走になってまーす!!」
ナミはナゼか、
その朝に会ったばかりのはずのウチの両親と一緒に、
朝飯を食っていた。
そして、朝飯を食い終わって、ナミを駅まで送る。
ナミは、その途中、オレに向かって訊いてきた。
「私になんかした?」
オレは、「何もしてないに決まってるだろ!!」と否定する。
おっぱいを触ろうとしたことは黙っていたのだが、ナミが
「記憶が無いんだよね」と言うのを聞くと、オレは内心、思った。
「ちぃっ、何かしとけばよかったぁー!!」
家に帰ると、
ウチの母親が、なんだかニヤリとして、オレに話し掛けてきた。
「なかなかいい子じゃなーい」
おいおい、母親。
アンタ、なんかとてつもない勘違いをしているだろう?
コメント
戸惑うゲル兄に 萌えゲージ MIN ■■■■■■■□□□ MAX
でも、ゲルタさんの行動、正解でしたよ!
やっぱ、正々堂々と行かなくっちゃね
あれですよね。
(・∀・)キュンキュン!慣れしてないといつもと違うだけで(゜∀゜)ノ キュンキュン!ですよねぇ〜ww
わはははは、フラグ!!
ヤパっすね、
いろんな状況を頭のなかでシュミレートしちゃいます(笑
●やあちゃん様。
まったく、女子じゃなかったらブン殴ってるところです。
正々堂々、そうですよね。
隠れておっぱい触ったりしたら、立派な犯罪ですもんね。
危なかった、オレ!!
●マルクル様。
そうなんです!!
キュンキュンに飢えてると、
ちょっとしたことでキュンキュンしちゃうんです!!
「なに?この状況!!オレの部屋で女子が寝てる!!」
それだけでもう、部屋の中を意味も無く行ったり来たり(笑