会社での昼休み、
後輩のヒロトが話し掛けてきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ゲルタさん、メイドカフェって行ったことありますか?」

「あー、あるよ。秋葉原の。
 こないだお土産に『秋葉原銘菓ぽんぽこメイド』買ってきたろうが」
 
「あー、あれ、『銘菓ひよこ』じゃなかったんですか?」

「全然違うから。『秋葉原銘菓ぽんぽこメイド』だから」

「ふーん、味もカタチもほぼ『ひよこ』と同じでしたけどね」

「まぁね。包装紙にメイドさんの絵が描いてあっただけで
 中身はたぬきのカタチのまんじゅうだったしね」

「ホントに秋葉原銘菓なんですか?」

「知らね。違うんじゃないの?
 前からあったたぬきまんじゅうを、
 後からメイドさんの絵で包装したってところじゃない?
 で、何?メイドカフェがどうしたって?」
 
「いやー、俺、行ったことないから、面白いのかなーって思って」
 
「さー、どうだろね。人それぞれなんじゃない?」

「ゲルタさんはどうでした?
 “萌え”っすか?やっぱ“萌え”っすか?」

「いやー、オレはベツにねー。
 メイドさん見て喜んでる年齢でもないからねー」
 
「でも、行ったんすよね?秋葉原に」

「何事も経験だからね」

「大人っすねー」

「まぁね」
 
「じゃぁ、ゲルタさんはあんまり興味ないかもしんねーなぁ」

「何が?」

「いやー、ジツはですね」

「うん」
 
 
 
 
 
 
「近くにメイドカフェがオープンしたらしいっすよ」
 
 
 
 
 
 
ま、マジでっ!?
 
 
 
 
 
 
「あ、今、ゲルタさん、顔が変わりましたよね?」

「変ってねぇよ!!全然変ってねぇよ!!」

「うっそーん」

「ホントだっつーの!!
 オレは常に冷静だから!!
 感情が顔に出ない人間だから!!
 “あれ?キミ、こけし?”くらいに表情変んねーから!!」

「こけし面っすか」

「あー、こけし面だね。オレはこけし面だね。
 しかもそんじょそこらのこけしじゃねぇぞ?鳴子のこけしな」

「あー、メジャーっすね、鳴子こけしは」

「こけし界のスーパースターだな。
 こけし界のジャニーズ事務所みてぇなもんだ」

「なんすか、“こけし界”って」

「あるんだよ、こけしにはこけしの世界が。
 で?何?そのオープンしたメイドカフェってどこにあんの?」

「いや、オレも聞いただけなんですけど、街中らしいっすよ」

「へー、そうなんだ」

「何?もしかしてゲルタさん、行きたいんすか?」
 
「いや、ベツに行きたくはねーけどさ。
 でも、オメーは行きたいんでしょ?」

「うん、俺は行きたいっす」

「じゃ、付き合ってやろうか?1人じゃ行きづらいだろうし」

「いや、いいっすよ」

「いいから付き合ってやるよ」

「いや、いいっすよ。興味無い人付き合わせるのも悪いし」
 
「いいから遠慮すんなって」

「いや、ほんとに」
 
 
 
 
 
 
「うっせ!!
 付き合うっつったら付き合ってやんだよ!!
 めんどくせぇこと言ってると殴っちゃうぞコノヤロー」
 
 
 
 
 
 
「わかりましたよ!!じゃ、一緒に行きましょうよ!!」
 
 
 
 
 
 
「わかった、じゃぁ、
 しょーがねぇから付き合ってやるよ。めんどくせぇけどー」

「ゲルタさんの方がめんどくせぇんすけど」

「じゃ、今日は定時で退社な」

「あ、今日行くんすか?」

「当たり前じゃん!!今日行かなくていつ行くんだよ!!」

「なんか、めんどくせぇとか言いながらノリノリじゃないっすか?」

「違うよ、今日しか空いてないからだよ。
 他の日は全部スケジュールがびっちりだから。
 オレの日常は分刻みでスケジュールが入ってるから」

「国会議員並みっすね」

「首相レベルな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
で、仕事帰りに目的地のメイドカフェに向かう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「メイドさんて、ホントに“ご主人様”って言うんですか?」

「言うね。初めて言った店なのに
 “お帰りなさいませ、ご主人様”って言うもん」

「へー、なんかすげぇ」

「あれ?もしかしてオレ、
 以前にもここに来たことある?なんてそんな錯覚に」

「陥るんすか?」

「陥らねーけど」
 
「なんすか、ソレ」

「でも、もしかするとオレは多重人格者で、
 オレとは違う人格であるオレが以前にも・・・なんてね。
 ビリー・ミリガン的な」

「誰すか?ソレ」

「なんかスゲー人だよ」

「へー」

「しかし、店が見つからないねー」

「多分、このへんにあるって話だったんですけど・・・」

「いや、オレもパソコンで調べたんだけどさー」

「え?いつ調べたんすか?」

「仕事中?」

「仕事中に何やってんすか」

「ダイジョブダイジョブ。バレなかったから」

「そういう問題じゃないっすよ」

「ドンマイドンマイ」

「ドンマイっては自分では言わない言葉ですよ」

「で、調べたんだけどさー。
 全然出てこねーんだよ。フィルタかかっちゃうし」

「あー、そうでしょうね。
 多分、このへんって聞いたんだけどなぁ」

「でもこのへん、飲み屋ばっかじゃね?」

「ですよねー」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして、さらに店を探すこと約5分。
やっと、目的の店を発見した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あ!!この店じゃねっすか?」

「ああ、ホントだ!!メイドって書いてある!!」
 
「わー、やっと見つけたー。ホントにあったんだー」

「あれ?ちょっと待って?」

「なんすか?」

「キミ、店の看板をよく見てみろ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『30分 6000円』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「うっわ!!高ぇっすね!!
 メイドカフェってこんなん高いんすか?」

「いや・・・」

「じゃ、なんで?」
 
「キミ、この店の話は誰に聞いた?
 ソイツはメイドカフェって言ったのか?」

「言いましたよ」

「じゃぁ、ソイツを一発殴っとけ。
 いいか、この店はメイドカフェじゃなく・・・」
 
「メイドカフェじゃなく・・・」
 
 
 
 
 
 
「メイドパブだ!!」
 
 
 
 
 
 
「メイドパブ!!
 何すか?メイドパブって何すか!?」

「知らん!!
 ランジェリーパブみたいなもんだろ!!」

「ランジェリーパブって何すかー!?」
 
「アレだ!!
 なんか知んねーけど下着のオネイサンとお酒を飲む店だ!!」

「下着って何すか?ブラジャーっすか?」

「ブラジャーだ!!」

「パンツっすか!?」

「パンツだ!!」

「おかしいじゃん!!
 下着で酒飲んでんのおかしいじゃん!!」

「でも、世の中にはそういう世界もある!!」

「行ったことあんすか?」

「無ぇよ!!
 オレ、そういう大人な店は苦手なんだよ!!」

「じゃ、ここも大人な店なんすかね?」

「多分、お酒飲みながら
 メイドさんとお話するだけの店だと思うけど・・・」

「どうします?入りますか?」

「でもさ、30分っつったらあっという間だぜ?」

「そうっすよね」

「そんなあっという間にできる話なんつったらさ、
 自己紹介と、あと、干支の話だけだろ」

「ゲルタさん、干支の話なんかするんすか?」

「や、この歳になると、
 店のオネイサンとかはたいてい、一回り下の年齢とかだから。
 12歳下とかがザラだから。
 “22歳です”なんつったらもう、
 “じゃぁ、丑年だねぇ”なんつって」

「あ、オレも丑年っすよ」

「残念ながら、オメーに興味は無ぇ」

「じゃー、どうします?入るのやめますか?」

「そうだなー。
 なんか、モチベーション下がったよな」

「そうっすね」

「ソレにさ、考えてみれば中のメイドさんも地元のヤツでしょ。
 福島弁丸出しでメイドさんやられてもなー。なんかなー」

「確かに」

「6000円払うのもなんかムカツクっしょ。
 だったら秋葉原行くっつーの。
 もうちょっと金出して本場まで行くっつーの」

「そうっすね。
 じゃ、今日はナシってことで」

「そうだね」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
結局、メイドパブに行くのはやめになる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「じゃ、この後どうします?どこか行きます?」

「じゃ、あそこ行こうか、あそこ」

「どこっすか?」
 
 
 
 
 
 
「ステラおばさんのクッキー」
 
 
 
 
 
 
「マジすか?ステラおばさんすか?ナゼにステラおばさん?」

「や、あそこってさ、
 お店の人の格好が若干メイドさんっぽいでしょ」

「そうすか?」

「若干ね、若干。メイドさんじゃないけど。
 秋葉原に行く時までは、ステラおばさんに行こうぜ?」

「クッキー、美味しいですしね。
 つーか、秋葉原、行くんすか?」

「オメ、行きてーでしょ?」

「まぁ」
  
「しょーがねーから付き合ってやるよ。めんどくせぇけどー」
 
 
 
 
 
 
 
 

コメント

マルクル
マルクル
2008年3月9日23:59

そのメイドカフェお酒飲めるんじゃないですかね?w
あと最近はキャバクラにメイドカフェ混ぜちゃった的なのも多いですよねー。夜はお酒出しますとかの。

メイドって書く?の日本だけらしいですね。
ホントはメードらしいですよ〜。

さかち
さかち
2008年3月10日5:31

メイドサン(゜∀゜)

nophoto
りぃ
2008年3月10日11:55

ゲルさんと後輩さんのやり取りの随所に笑いがこみあげて
たまりませんでしたw
「萌え」ブームにのってメイド風包装のバレンタインチョコを
買ってみましたが、中は普通の麦チョコでした^^;
便乗商売はそんなもんですよねーw
ビリー・ミリガンは本で読みました^^
24人くらい人格が分かれてしまった、
とにかくすごい人ですよね!

ゲルさんのブログは、病んで暗い心に差し込む一筋の光のようです♪

nophoto
CX
2008年3月10日13:22

オネイサン(゜∀゜)

ゲルタ
ゲルタ改
2008年3月10日23:08

●マルクル様。

やー、もう、完全にパブでしたね。
看板にパブって書いてありました(笑

おお、そうなんですか!!
メイドは日本だけなんですか!!
知りませんでした!!
でもなんか、メイドさんのほうがしっくり来ますね(笑
 
 
 
●さかち様。

メイドさんです!!
好きですか?
オレはダイスキです!!
 
 
 
●りぃ様。

ありがとうございます!!
おおお、萌えブームにのってメイド風のチョコを!!
しかし、麦チョコ!!あははは!!
ビリー・ミリガン、なんかすごいですよね。
一人の中に24人って、
いったいどんなんだろうってオレも考えました。
あの本のあたりから、多重人格なんてのが
認知されてきましたよねー。

や、ありがとうございます!!
そこまで仰っていただいて!!
こんなバカみたいな日記でも、
そう仰っていただければ書いててよかったと思えます!!
ホントにありがとうございます!!
 
 
 
●CX様。

そうです、オネイサンです!!
好きですか?
オレはダイスキです!!愛してます!!

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