花見。

　
　
　
　
　
　
「花見」、である。
「花見」、だったのだそうである。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
「花」なんか、いっこも咲いてないのに。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
いや、昨日のことですよ。
昨日の仕事中のことですよ。
いつもの高校時代からのアホな友人からメールが来たのですね。
　
　
　
　
　
　
　
　
『花見やることになったから。
　○○河川敷公園に21時ねー。夜桜お七も来いよ』
　
　
　
　
　
　
　
　
え？
花なんてまだ咲いてませんが？
　
　
　
　
　
　
　
　
だいたい、意味がわかんねぇ。
何ですか？
メールの最後の『夜桜お七』って何デスカ？オレのことですか？
残念ながら、ボクはお七じゃありませんが。
　
ちうか、アホだろ。
桜なんか咲いてねぇのに「花見」って、オマエらアホだろ。

ここは東北だぜ？
東北の春は遅いぜ？

いくら花見が待ち遠しいとはいえ、
いくらなんでもフライング気味じゃぁないのかい、
このアホどもめが、と。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
でもまぁ、オレも行ったワケですが（←アホ）
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
指定の公園に最初に到着したのはオレでした。

で、この公園、桜が満開の時には河川敷ということもあり、
光る川沿いに桜がズラーッと並んで桜が満開時には
ソレはソレはスバラシイ光景になるのですね。
　
　
　
しかし生憎、いっこも咲いてねぇ。
　
　
　
屋台も出てなけりゃライトアップもされてねぇ。
　
　
　
ちうかそもそも、人がいねぇ。
　
　
　
うっはー！！
ずいぶんと淋しい花見じゃないか、オイ！！
ちうか花が無ぇから何見ていいかわかんねぇよ！！
暗いし！！
何も見えねぇし！！
っつーか、夜の公園って結構コワイ！！
　
早く来い！！と。

早く来てくれよオイ！！と。

そもそもヤツらは時間にルーズなところがありまして、
時間にざっくりしてるところがありまして、
20分や30分は平気で遅刻してくる。
　
でもまぁ、そんなことはいつものことですから、
オレは1人で淋しい思いをしながらも暗い公園で待っていたのですね。
　
　
　
　
　
　　
で、しばらくすると手ぶらのタケがやってきました。
　
　
　
　
　
　
タケ：「おぅ、ゲルター。早いんじゃね？」
　
ゲル：「オメーが遅ぇんだよ」

タケ：「つーか、みんなは？」

ゲル：「まだ来てねぇけど。オメーが最初」
　
タケ：「みんなルーズだよなー」

ゲル：「オメーもじゅうぶんにルーズだけどな」
　
　
　
　
　
　
で、その次に手ぶらでやってきたのはテツでした。
　
　
　
　
　
　
テツ：「おう、早いねー」

ゲル：「オメーが遅ぇんだけどな」

テツ：「つーか、桜なんか咲いてねぇじゃん」

ゲル：「まぁね」
　
　
　
　
　
　
で、その次にやってきたのは手ぶらのマサでした。
　
　
　
　
　
　
ゲル：「遅ぇぞオメー」

マサ：「おお、今度オレ、課長になったからよ。忙しいんだわ。
　　　　つーか、これ、何なの？
　　　　桜なんか全然咲いてないんだけど」

ゲル：「え？みんなで花見やるべって決めたんじゃないの？」

マサ：「いや、カズから花見やるからって連絡がきた」

テツ：「あ、オレもカズから来た」

タケ：「オレも」

ゲル：「あ、そう。オレもだよ」
　
　
　
　
　
　
続いて手ぶらでやってきたのは、タカでした。
　
　
　
　
　
　
タカ：「みんな早いねー」

ゲル：「アンタが遅ぇだけだけどな」

タカ：「つーか、なんで花見なの？」

ゲル：「知らん。カズが言い出しっぺらしい」

タカ：「ふ〜ん」
　
　
　
　
　
　
で、その次に手ぶらでやってきたのは、
今回の言い出しっぺであるらしいカズと
よく行動を共にしているアンでした。
　
　
　
　
　
　
ゲル：「あれ？カズと一緒に来たんじゃないの？」

アン：「あー、なんかねー、
　　　　買い物していくから先に行っててって言ってた」

ゲル：「あ、そ。酒買ってくんのかな？
　　　　ちうか、なんで花見なの？」
　
アン：「いや、カズと花見したいよねーって言ってたら、
　　　　じゃ、やるべってことになってさ」

ゲル：「花、咲いてねぇし」

アン：「うん、でも、花見って名目がないと、
　　　　外で飲もうって思わないじゃない？
　　　　外で飲みたかったらしいよ」

ゲル：「ふ〜ん。あ、そ」
　
　
　
　
　
　
で、それからしばらくして、
最後に手ぶらでやってきたのは、言い出しっぺのカズでした。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
・・・・・・
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
で、酒は誰が？
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
みんな手ぶらで来てんですけど、酒は誰が？
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
おいおい、これって花見だよな？
花は咲いてねぇけど一応花見が名目で集まってんだよな？
　
　
　
　
　
　
ゲル：「あれ？カズが用意してくんじゃなかったの？」

カズ：「いや、オレはみんなが持ってくると思ってたんだけど」

ゲル：「言ってねーじゃん！！
　　　　酒を持ってこいってそんなこと言ってねーじゃん！！
　　　　フツー、言い出しっぺが準備するじゃん！！
　　　　つーかオメー、買い物してくるって話だったじゃん。
　　　　何？酒の買出しじゃなかったの？」
　
カズ：「いや」

ゲル：「じゃ、オメーは何を買いに行って
　　　　オレらをこんなに待たせたの？」
　
　
　
　
　
　
すると、「いや、これなんだけど・・・」と言いつつ
カズがポケットから出したのは。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
ゴム製のフリスビー。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
ソレをどうしろと？
そのフリスビーで、オレらにどうしろと？
いや、「どうしろと？」っつったって、
フリスビーだから「投げる」しかないんですけど。
　
　
　
　
　
　
カズ：「いや、酒飲みながらみんなで遊ぼうかなーと思って」
　
ゲル：「フリスビーで？」

カズ：「うん、フリスビーで」
　
　
　
　
　
　
アホか！！
誰がやるんだ、フリスビーを！！
酒を飲みながら誰がやるんだ、フリスビーを！！

オレら、アレだぜ？
今年で35歳になるんだぜ？

ソレが、やるか？
35歳が、やるか？
酒を飲みながら？
フリスビーを？
　
　
　
　
　
　
んなもん、やんねぇよ！！
　
　
　
　
　
　
オレら、そんなに爽やかじゃねーから！！
オレら、酒を飲みながらフリスビーするほど青春時代じゃねぇから！！
　
　
　
　
　
　
カズ：「でも、見て！！
　　　　これ見て見て！！
　　　　このフリスビー、折りたたんでポケットに入るんだよ？
　　　　スゲくない？
　　　　このフリスビー、スゲくない？」
　
　
　
　
　
　
聞く耳持たんわっ！！
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
・・・・・・
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
しかし結局、
オレらは「せっかく買ったものだから」と
10分くらいフリスビーをやって、その後、
居酒屋に向かったのでした。