“ パンッ ”
蚊を、殺した。
チュィーンと不快な音をたてながら
部屋の中を彷徨ってる蚊を両手で叩いて、殺した。
さっきまではいつ、蚊に刺されるかと怯えていたものだけれど、
“ パンッ ”
蚊はもはや、オレの両の手の中にいるはず。
確実に仕留めた。
オレはヤツを、確実に仕留めた。
しかもオレはまだ、ヤツに刺されちゃいない。
胸を突くのは満足感。
これで安心して眠りにつくことができる。
と、同時に、少しの罪悪感がキシリと音をたてる。
何も殺すことはなかったんじゃないか。
蚊だってベツに悪いことをしてるのではなくて、
生きていくために必要なことを当然のようにするだけなワケで、
ソレをベツに、殺すことはなかったんじゃないか。
でも、だからといって自分が刺されていいというワケでもなく。
そうすれば当然、蚊がオレの近くに存在してる限り
いつかは「ヤるか、ヤられるか」の関係になるワケで。
しかし、もう9月なのだ。
蚊の寿命がどのくらいの長さなのかは知らないけれど、
寒さに耐えられるとも思えず、
あと少しで消えてしまうであろう灯を、
オレは一瞬で捻りつぶしてしまったワケで。
即死なのだろうか。
即死って、どんな感じなのだろうか。
そんなことを考えると、オレは自然界にとって、
とてつもない大悪人なのではないかと思えてしまうのだけれど、
でも、自分が蚊に刺されるのと、
蚊連中に「蚊殺し」のレッテルを貼られるのであれば、
やっぱオレは蚊を殺すぜ、
だって蚊は、
『僕らはみんな生きている』の歌詞に登場しねぇじゃん、
登場しねぇのはそれなりの理由があるからだぜ、蚊よ、
反省しろ反省。
そんな言い訳を自分の中にある罪悪感にぶつけて誤魔化しながら
蚊を潰した手を開いてみると、そこにやっぱり、蚊は、いた。
手のひらには蚊と、
その蚊が生きる為に吸ったのであろう、少しの血があった。
・・・・・・
オレは刺されてないんだけど・・・これ、誰の・・・血?
キャァァァッ!!
誰の血!?
ねぇ、これ、誰の血!?
なんかとっても気持ち悪いんですけど!!
コメント
真っ赤に流れる 誰の血潮〜