友人であるジェット君の奥さん、
マルちゃんが絵画教室に通い始めたのは知っていた。
ジェット君いわく「なんにでもすぐ興味を持つ」らしく、
今までも陶芸だの華道だのに興味を持って、
習い始めてはすぐに辞めていたらしいのだけど、
それでも、絵を描くのはワリと長続きしてるようで、
先日、習い始めて3か月になったとのこと。
で、今回、
マルちゃんが通う絵画教室で「発表会」ってんだか「展覧会」ってんだか、
とにかく、そんなのがあるってことで、
先日、ジェット君はオレにその発表会の招待状を持ってきてくれた。
オレが絵に興味を持ってることを知ってるマルちゃんが、
オレに渡すようにとジェット君に持たせたとのこと。
で、ジェット君はウチに来たのだが、
そのジェット君は、招待状をオレに差し出しながらこう言った。
「来なくていいよ」
ジェット君は、マルちゃんの絵を観なくてもいいと言う。
どうして?と問えば、ジェット君は言った。
「俺は絵の事は全然わかんねぇけど、
そんな俺が観ても巧くないことはわかったから」
しかし、絵を始めてまだ3か月しか経ってないじゃないか。
ソレなのに、そんな彼女に巧い絵を求めるのは酷というものだ、
オレがそう言うと、ジェット君は言った。
「いや、それはわかるんだけどさ、
でも、なんつーか、違うんだよ。
なんて言ったらいいのかわかんねぇけど、とにかく違うんだ」
どこが?
何が違う?
ジェット君でさえ巧く説明できないものをオレがわかるワケもなく、
オレが困っていると、ジェット君は諦めたように、言った。
「じゃ、暇だったらマルの絵、観てやってよ」
オレは「うん」と答え、その招待状を受け取る。
そして、「ちなみにどんな絵を描いてんの?」と問うと、
ジェット君は、言った。
「皿。あと、りんご」
なるほど、静物画というヤツだろうか。
そして昨日、
オレはジェット君から受け取った招待状を持って、
会場であるギャラリーに足を運んでみた。
そこは小さいギャラリーなのだが、人は結構多い。
壁に絵が飾られているから、
その絵の隣に立っている人はおそらくその絵の作者なのだろう。
そして、会場にいるそれ以外の人はきっと作者の家族とか友達なんだろうな、
そんなことを考えながら中に入ると、入ってすぐのところに
マルちゃんが誰かと話をしながら立っていた。
その隣にはナゼか、楽しそうに話をしているマルちゃんとは対照的に
明らかに暇を持て余しているジェット君がいる。
最初にオレに気づいたのはジェット君。
ジェット君はオレに向かって手を挙げると、
隣にいたマルちゃんもオレに気づいた。
「あ、部長~」
昔、オレとジェット君とマルちゃん、3人でボウリングチームとか言って
ボウリングをやっていて、オレがリーダーだった為に、
マルちゃんは未だにオレを「部長」とか「キャプテン」とか呼ぶ。
「ちゃんと来てくれたんだねー。
絵、描いたからさ、ゆっくり観てってよー」
マルちゃんがそう言うと、
隣からジェット君が「ゆっくり観るほどの数なんか描いてねぇべ」と言い、
マルちゃんはソレに「うっさい!!」と笑いながら言うもんだから、
オレもなんだか笑った。
で、肝心の絵。
肝心の、マルちゃんが描いた絵なのだが。
オレが「どれ?」と訊くと、
マルちゃんは後ろを指さして「これ~」と言い、
そこには、暗い緑色の背景の中にポツンと、白い一枚の皿が描かれた絵があった。
タイトル『 皿 』。
そして、その隣にもマルちゃんが描いたという絵があった。
こちらは黄色っぽい背景に、赤いりんごがポツンと一個、描いてある。
タイトル『 りんご 』。
うーん。
なんてストレート。
マルちゃんはオレに、感想を訊く。
「どう?いや、まだヘタっぴなんだけどね~」と言うのだが、
決して、ヘタではない。
始めたばかりだと思えば決してヘタではないと思うのだ。
でも、なんちうか。
皿とりんご、一枚の絵にまとめて描こうとは思わなかったのだろうか。
・・・・・・
マルちゃんが会場に友達を見つけてオレらのところを離れると、
オレの隣でジェット君は
「ね?なんか、違うべ?」と小声で言う。
確かに、本人には言えないけれど、「なんか違う」気がする。
しかし、「なんか違う」と言いながらも、ジェット君はこうも言うのだ。
「でも、本人がこれでイイってんだから、
オレらがどんなにヘタクソと思っても、
本人にとってはこれが傑作なんだろーな。
なんつーの?感性の違い?」
確かに、本人がソレでいいなら、
ソレはもはや、まわりが口を挟める問題ではない。
絵が好きだから絵を描いているのであって、
表現したいから表現してるのであって、
ソレがどんな作品であろうと
その心にマワリが入り込む余地などないのだと思う。
どんなにヘタクソな絵であろうと表現しようとする心こそが芸術であり、
そして、その心ははロックなのだ。
マルちゃんが行ってしまったあと、
オレらは彼女の絵の前でボーと立っていた。
ジェット君は、目を細めたりしてマルちゃんの絵をしばらく眺めていたのだが、
急にオレに向かうと、笑いながら、言った。
「まぁ、飽きるまで描いてもらうわ」
コメント
なんかもう、家に飾りたいです(^^☆
これからも絵入りブログ、楽しみにしてまぁす。
そのうち4コマ漫画になったりして(苦笑)
いやーん、ありがとうございます!!
なんかもう、すっごいテキトーに描いた絵なので
そう仰ってくださるとありがたいです!!いやーん。
ありがとうございます!!
●やあちゃん様。
ややや、画伯だなんて!!(笑
あ、4コマ漫画、面白いですね!!
グッドアイディーア!!
考えてみよう!!