前から気になってたのである。
映画館で温かい飲み物を買うたびに気になってたのである。
「これ、吹けるかな?」
映画館なんかで温かい飲み物を買うと紙コップの上にのっている、
端っこに小さな楕円形の穴があいてるあの白いフタ、
その楕円形の穴から勢いヨク飲み物を飲むと「アチッ!!」ってなる
あの小さな穴のあいたフタを見るたびに、気になっていたのである。
「これ、吹けるかな?」
あの穴からフゥと息を注ぎ込んでこれを吹くと、どんな音がするのだろう。
というか、どんな吹き方をすればいいのだろう。
尺八のように吹けばいいのかな?
フルートのように吹けばいいのかな?
どっちも吹いたことないですけど。
そもそもコレ、吹いたら楽器のように音が出るのかな?
やってみることにした。
オレは、暗い映画館の中で、あの、
温かい飲み物が入った紙コップの上にのってるフタを吹いてみることにした。
「どうせ誰もいねぇし、いいよな」
ひとり、なのである。
映画館にオレひとり、だったのである。
その時映画館の中には、その映画を観ようと訪れた客が、
オレ、たったひとりだったのだ。
その日はオレ、仕事帰りになんだか、
「家に帰りたくないな」だなんて、そんな家出少女みたいな気持ちになって、
フラリと映画館のレイトショーに入ったのだが、
客が、オレひとりだけだったのである。
いや、間違いない。
なんせオレはいつも、映画を観るときはいちばん後ろの席の
入り口に近いいちばん端っこの席に座ると決めていて、
その日も、そこに座ったのだ。
オレの目の前には誰もいなかったし、
ほかの客が入ってくる気配もなかった。
フツー、どんなにツマラナイ映画だったとしても、
最低でも2、3人は自分以外に客がいるもんだ。
しかしその日は、オレだけだったのである。
オレ以外に、客がいなかったのである。
と、こういうことを書くと、
「お、映画館貸切で羨ましいね」とか言われそうなもんだが、いやいやいやいや。
羨ましいだなんて、いやいやいやいや。
今回オレは生まれて初めて映画館にひとり、
という状況に陥ってしまったのだけれど、
この状況、羨ましいどころか逆に、
逆に、居心地が悪い。
なんせ、オレの前はガラーン、である。
いわば、オレとスクリーンが一対一で向かい合っているのである。
なんかとっても不思議な感覚。
しかし、そんな状況でも映画館は動きだす。
時間が来れば従業員のオネイサンがやってきて、
館内に響くような大きな声で、言うのだ。
「それでは上映を始めます」
実質、聞いているのはオレひとりなのに、
こそっと、オレだけに言ってくれればいいのに、
彼女は大きな声で、プロとして彼女の仕事をマットウするのだ。
「他のお客様のご迷惑となりますので、携帯電話の電源は必ずお切りください」
・・・・・・
一応。
一応ね、携帯の電源切っておいたけどね、
他のお客様いないじゃない・・・
そして、その後始まるオレのためだけのマンツーマン上映。
なんかとっても申し訳ない気分になった。
なんせ、オレだけのためにスタッフが働いているのだ。
「ゴメンね!!
なんか、来ちゃってゴメンね!!」
上映中、オレは、そんな気分に苛まれたのである。
・・・・・・
で、話は前に戻って、
温かい飲み物のフタを吹いてみよう、と思った話である。
一応、携帯の電源は切ってはおいたが、
なんせ、他のお客様がいなかったのだ。
「他のお客様のご迷惑になりますので」の「他のお客様」がいないのだ。
オレは、あの、温かい飲み物の上についてるフタの穴に口を近づけて、
腹に溜めた息を口をすぼめて圧縮して、
そのフタの穴に注ぎ込んで吹いてみた。
ポ~~~~~~~~
ギャハハハハハ!!
オレ、上手い!!
隠れた才能発見、である。
紙コップの上のフタを吹く才能。
まぁ、まったく何の役にもたちませんが。
コメント
あ~・・・自分にもありますよ、ひろ~い劇場に一人きり・・・。
それも、昼間の上映で。
映画自体はそんな人気がなかったワケではなかったんですがね。
あ、因みに作品は「ブラックホーク・ダウン」です。
有名でしょ?
まぁ、公開からだいぶ日が経ち、もう公開も最終週ってときでしたからでしょうか?
映画をみて、こんなおいしい(?)経験、後にも先にもこれが最後だろうなぁ。
さすがゲルタさん!
目の付け所が違う!!!
朝から笑かしてもらいました(ノ∀`)
おお、スカル様も!!
しかもブラックホーク・ダウンで!!
あの映画は有名ですもんねー。
オレが観たのは「96時間」ってヤツでした。
最近始まったばっかなんだけどなー。
●xYUKIx様。
あれ、鳴りますよー。
てか、やってみたら鳴りました(笑
機会があったらやってみてください!!
フルートを吹く感じっす。
や、フルート吹いたことないんですけど(笑