3月11日 ノ 記録。 (1)
2012年3月11日 日常ちょうど一年前のあの出来事が自分の中に影響してるのかどうかは
定かではないのだけれど、どうも、ほぼ全てにおいて楽しめない自分がいる。
PCに向かって何かを書きたいと思っても出てくる言葉は暗く、
怒りの言葉や悲しみの言葉ばかりであって、
でも、ソレらは自分が本当に望んでいるモノではないような気がして、
書いては消し、
書いては消し、
苦労して書いたモノは自分にとってなんら面白いモノではなく、
やがて、ネットに繋がること自体をヤメテしまった。
そして今日、3月11日。
ふと、正月以来部屋の端っこに追いやられて
すっかりオレの生活とは無縁となっていたPCに気づく。
久しぶりに日記でも書いてみようかな、という気持ちになりました。
っつってもまぁ、さっきからPCの画面に向かって書いたり消したりを
ただただ繰り返してるばかりで一向に何も進まず、
「こりゃぁ、リハビリが必要だな」なんて思っているワケですが、
まぁ、今日はあの日からちょうど一年ってことで、リハビリがてら、
一年前のあの時に、
ここ福島で、
オレが体験したことでも書いてみようと思います。
以下、リハビリ。
あの日、3月11日。
アレから一年経つワケだが、
あの時、あの瞬間のことは未だはっきりと覚えている。
その日、その瞬間と、その後数日のことは未だはっきりと覚えているのである。
その日はアレだった。
ちょうどその時オレは会社にいて、アレだった。
えーと、確か・・・
会社で確か・・・
えーと・・・
・・・・・・
・・・・・・(←忘れてんじゃねーか)
嘘です。
ちゃんと覚えています。
ちうか、忘れようにも忘れられません。
2011年3月11日、14時46分。
日本が大きく揺れました。
その時オレはちょうど会社の3階の事務室で電話の最中。
電話の相手はその後、津波で職場が流されてしまった局の人。
ドドドド、とか、ダンダンダンッとか、そんな音と共に突然激しく揺れ始めて、
そしてソレは電話の相手側も同じらしく。
「やべぇ!!
電話切りますよ!!電話切りますね!!」
「おお!!」
電話を切るとオレは職場を見まわしたワケですが、
すると、同じ職場の多くの人が席から立ち上がって
なぜかみんな、天井を見上げていました。
オレもつい、みんなにつられて「え?何かあんの?」と
天井を見上げてしまったワケですが、すると、
さっきまでドドドドだかダンダンッとかいってた音が今度は
ドダダダダとかズババババとか、なんだかもうワケがわからない音になって、
ソレと共に、今度は立っているのが困難なほどの揺れに襲われました。
誰かが叫びました。
「机の下に隠れろっ!!早くっ!!」
しかしオレにはナゼかその時「食器棚を守る」という使命感が芽生えていて、
みんなが机の下に隠れる中、
オレは必死でオレの席の近くにある食器棚をひとり、
「ぬおー」と押さえていました。
と、また誰かが言いました。
「そんなのどうでもいいから!!ゲルさん!!」
た、確かに!!
オレは自分の席の、机の下に隠れました。
で、隠れたのはいいのですが、
あまりの揺れの大きさに、しゃがんでいるにも関わらず、
身体を支えることができません。
必死に自分の机の足の部分を掴むのですが、
あまりの揺れの大きさに机が前後左右、もう、オレの身体ごと
ワケわかんないくらいに床の上を滑りまくって、
とても身体の全体を隠すのは不可能な状態でした。
揺れとその音は、ますます大きくなりました。
ふと机の下から目をあげると、台の上に置かれたプリンターが
ポンと空中に浮き上がってる瞬間が見えました。
と、ほぼ同時に、天井の一部が崩れて落ちてくるのが見えました。
オレの目の前に、オレが会社で使用しているPCが落ちてきました。
どこからか、ガシャンとかバリンとか、そんな音が聞こえてきました。
でも不思議と、キャーとかワーとか、そんな悲鳴は聞こえてはきませんでした。
いや、実際にはキャーとかワーとかはあったのかもしれないけれど、
オレの耳には聞こえてきませんでした。
と、しばらくすると、一旦揺れがおさまったように感じました。
「もう終わったかな?」
オレがそう思った瞬間、
またドーンという音と共にさっきよりも大きく揺れ始めました。
机のしたから横を見ると、隣の席の女子が、
「もう、いい加減にしなよ!!」とか、そんなんブチ切れていました。
地球に対してブチ切れていました。
オレは、そんな彼女に対して
「すぐ終わるから!!」とか、そんなことを言ってたように思います。
でもソレはすぐには終わらず、
具体的にどのくらい揺れていたのかは解りませんが、
かなり長い間、揺れていたように感じました。
その間オレは、机の下でまあるくなりながら、
机と共に床の上をあっちにこっちにと滑りまくっていました。
また、天井が落ちてきました。
ロッカーが倒れるのが見えました。
壁にかかっていた時計が落ちるのが見えました。
14型のブラウン管テレビが面白いように飛び跳ねているのが見えました。
本当に、死ぬかもしれないと感じました。
でも、しばらくすると、その揺れは小さくなっていきました。
やがて揺れがおさまると、
ひとり、続いてひとりと、机のしたから顔を出して立ちあがりました。
みんな、言葉が出ませんでした。
言葉もなくただ、突っ立っていました。
と、誰かが突然笑い始めました。
「わははは、おっかねー!!」
一度死ぬことを意識した人間が、次に助かったことを意識した時、
とっさに出てくるのは「笑い」なのかもしれません。
「わはははは!!」
「すごかったよねー!!」
ナゼかみんな笑いました。
と、誰かが「これって避難した方がいいんじゃないですか?」と上司に対して
質問を投げかけました。
あたりを見回すと、なんちうか、
まるでゴミの集積場のような、いたるところにあらゆるモノが散乱していて、
もう、ぐっちゃぐちゃになっていました。
上司は、「いや、もう来ないでしょう」とか、そんなことを言いました。
と、また、揺れました。
笑いは一瞬にして消えました。
机の下に潜ろうとする人、身体が固まって動けないでいる人、
誰もがもう、笑ってはいませんでした。
揺れがおさまると、オレも、「いや、避難したほうがいいですって!!」と
上司に訴えました。
なんせ、天井が落ちてきているのですから、
建物が崩壊することだって考えられます。
と、しばらくすると、総務課の人間が、
「早く!!避難してください!!」と言いながら走り回り出しました。
その声を聞いた途端、みんな、避難にいち早く動き出しました。
すぐに部屋を飛び出して我先に逃げ出す人、
倒れたロッカーから上着を取り出して、着こんでから逃げ出す人。
避難訓練なんかは頭にはありません。
オレは、オレの職場内にいる足が不自由な男性2人を仲間と手分けして、
担いで事務室から出ました。
事務室を出ると、職場の廊下には無数の亀裂が入り、
壁や天井が剥がれているのが見えました。
オレは、足の不自由な男性をおんぶして階段を駆け降りると、
会社の前にある公園に逃げ出しました。
その公園には、会社の隣にある医療施設から逃げ出してきた人、
近くのマンションから逃げ出してきた人、
そして、ウチの会社の建物から逃げ出してきたひとでごった返していました。
しばらくすると、急に、雪が降り出しました。
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